Carmenのスペイン語こぼれ話

5.  性をめぐる話

   

 もちろんスペイン語の文法性の話なのは言うまでもない。(思わせぶりでスミマセン)

 原則として -o で終わる名詞は男性名詞、-a で終わる名詞は女性名詞、ということになっているが、これはあくまでもひとつの傾向でしかないようだ。 スペイン語ネイティブは、この名詞は -o で終わるから男性名詞で、これは -a で終わるから女性名詞、などと意識しているわけではなく、子供の頃から少しずつ言語を習得していく上でそれぞれの名詞の性を自然に覚えていくものらしい。 だから、たとえば男性名詞に冠詞や形容詞をくっつけるときにすべて男性形で揃えた「冠詞−名詞−形容詞」という組合せがスムーズに口をついて出てくるのだろう。 女性名詞にはこれまた女性形の冠詞と形容詞をすばやくあわせる。 スペイン語を学習したての初心者にとってはネイティブのこの迅速さは神業にすら思えるものだ。

 最初は自分なりの理屈をつけて必死でひとつひとつ単語の性を覚えたものだ。 例えば、太陽に男性の顔を、月に女性の顔をくっつけて単語の性のイメージづけを試みた。 しかし、覚えなければならない単語は無数にあって、いつしかこういう覚え方をするのをやめてしまった。

 スペイン語とのつきあいは長い方だが、いまだにスペイン語で話していて文法的な間違いをよくしでかす。 でも、以前はそこでつまりがちであったのが、今はあつかましくなったのか、それでもかまわずとりあえず話を先に進めることができるようになった。 それと並行して、冠詞や形容詞の男性形・女性形選択にしても、以前は頭の中で必死で作文をして選んでいたのだが、これもあまり頭の中で考えなくなった。 ネイティブの感覚にはまだほど遠いはずなのだが、なんとなく、ほんとうになんとなくではあるのだが、性をきれいに揃えた単語のセットとでもいうべきものがおぼろげながら感知できるようになったような気がする。(でもやっぱり間違いがなくならないから単なる気のせいかもね)

 これってやはりスペイン語の歌詞を覚えたり、外大の学生だった時代に語劇に出演するために必死で膨大な量のスペイン語のセリフを丸暗記したりしたのが少しは功を奏しているのかな。 そういえば、授業で詩や小説などの文学作品の暗唱なんてのもやらされましたな。 単語ってそれだけで覚えるよりもある程度の意味のある固まりごと覚えたほうがいいようだ。はるか昔に覚えた語劇のセリフの大半はもう忘れてしまった。今や一から覚え直さない限り暗唱は無理である。 でも、ぼろぼろになった台本のページを繰り、ひとたび自分のパートのセリフを口にすれば、当時の気分がよみがえり、私は饒舌なスペイン人に変身する。 一度まとめて覚えたものはどうやら体のどこかに残っているようだ。

 語劇は誰でも経験できるものではないが、スペイン語の歌詞を覚えることなら誰にでも比較的簡単にできることだろう。 歌詞を声に出して歌っていると自分がすんなりと性数変化もこなしているような気分になるばかりでなく、実際にそのフレーズだけでも体のどこかにインプットされるようで、「冠詞−名詞−形容詞」のつながりが感覚的に理解できるような気がする。 「気がする」などというあまりはっきりしない話で申し訳ないけど、これは私に騙されたと思ってお試し下さいとしか言いようがない。

 200から900の数詞の後ろに女性名詞が来るとこの数詞群は -cientas という女性形になると初級文法で習っても翌年には忘れてしまう人が少なくない。 私はもちろん身についている。 学習歴が長いからということもあるが、スペインのデパートの店内放送などで、お買い得商品の値段を「なんとかシエンタス・ペセタス」と連呼していたあの調子が耳についてしまっているのだ。 そういえば、スペインの通貨ペセタの運命もあとわずかなのよね。 今度は「なんとかシエントス・エウロス」になるのか。 耳慣れてないせいだろう、気持ち悪いったらありゃしない。

 

   Carmen

 

0. はじめに 

1. スペイン語圏

2. 辞書の話

3. 外来語あれこれ

4. スペイン語のテキスト

5. 性をめぐる話

6. スペイン語の映画

7. 動詞の森にご案内

8. もう一度やりなおしたい

9. セニョリータとお嬢様

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