ヘレスはシェリー酒

アンダルシア地方では、日本でフォーティファイド(酒精強化)・ワインと呼ばれる、ワインにブランデーを添加して作るタイプのお酒作りがさかんです。スペインでは、ワインの発酵後にブランデーを加えますが、例外的に腐造防止、酢酸発酵防止(お酢の発酵)の為、発酵途中でアルコールを添加するペドロ・ヒメネスやモスカテルがあります。スペインの産地統制委員会では、ヘレス・デ・ラ・フロンテラ、プエルト・デ・サンタ・マリア、サンルカル・デ・バラメダ産のものだけをヘレス(Jerez、シェリー酒)と呼びます。



これらの地方では、紀元前1100年頃から、フェニキア人によって葡萄が栽培されていましたが、この地方の特徴的な製法は、ギリシア人が開発しました。当時のギリシア人は、長期間に渡る輸送に耐えられるように、発酵したばかりの新酒を煮詰めることによってアルコール度を高める方法でワインを作っていたため、飲むときには水を加えなければなりませんでした。その後、このワインは、ローマにも運ばれ始めました。

12世紀に入るとイギリスにも運ばれ始めましたが、16世紀にイギリスがカディスを攻撃したときに、約3000樽のヘレスを強奪。その結果、その頃からイギリスではヘレスの人気が高まったとされています。

また18世紀、英仏間の関係悪化やフランス革命のときに、スペインやポルトガルからワインを船でイギリスまで輸送しましたが、糖分やアルコール度を高めて変質を防ごう、と努力したのがヘレスの品質向上の所以だという説もあります。

いずれにしろ、ヘレスが国際的に有名になったのはイギリスのおかげと言えそうです。実際、ヘレスはスペイン国内よりも国外で、特にイギリスで多く飲まれています。



パロミノ種ヘレスになる葡萄は、パロミノ種が全体の96%を占めますが、他にもペドロ・ヒメネス種、モスカテル種という白葡萄があります。作り方としては、まず葡萄を圧搾し、上部に空間を持たせた樽で発酵させます。その後、産膜酵母の働きで、ワインの表面にカビのような白い膜ができます。これはフロール(花)と呼ばれ、ヘレス独特の香りを持たせる働きをします。さらに、アルコール度を高めるため、ブランデーが加えられます。最後に、ソレラ・システムと呼ばれる樽熟成を行います。3段から5段ほどに重ねられた樽には、下にいくほど古いワインが入っているので、最下段から熟成されたヘレスを取り出すと、上の樽から順番に下の樽に入り、古いワインと新しいワインが上手く混じりあうようにできています。このため、普通のワインのようにヴィンテージをつけることはありません。

ところで、一口にヘレスと言っても、大きく分けると以下のような7種類があります。


マンサニージャ(Manzanilla)
フィノと同じ性格を持つが、マンサニージャという呼称をつけられるのは、サンルカル・デ・バラメダ産のもののみ。薄い色合いで、すっきりとした辛口。

フィノ(Fino)
黄金色をした、上品だけれどもキツめの香りを持つ辛口。飲み口は軽め。ペール・クリーム(Pale cream)と表示されているのは、フィノをベースに作られた透明な甘口シェリー。

アモンティジャド(Amontillado)

フィノをさらに酸化、熟成させたもの。琥珀色で、乾果の香りを持つ。柔らかく、軽い味わいで、辛口。中甘口のものは、ミディアム・アモンティジャドと表示される。

オロロソ(Oloroso)

琥珀色、もしくはマホガニー材のような色合い。独特の香りと強いボディを持つ。辛口。中甘口にはミディアム・オロロソや、オロロソにペドロ・ヒメネスを少しブレンドして熟成させたアモロソ(Amoroso)があり、甘口のクリーム(Cream)もある。

パロ・コルタド(Palo cortado)

現在はあまり生産されていないが、アモンティジャドとオロロソの特徴を併せ持つ。ハシバミの香りで辛口。

ラヤ(Raya)

オロロソと似たような性格を持つが、現在はあまり生産されておらず、瓶詰めされたものが市場に出ることはない。

ビノス・ドゥルセス(Vinos dulces)
完熟葡萄、もしくは数日間天日にさらした葡萄で作られる。天日干しはソレオと呼ばれ、このため、非常に高い粘度(浸透圧)を持ち、それ以上アルコール発酵が進まないという特性を持っている。クリーム、モスカテル(Moscatel)、ペドロ・ヒメネス(Pedro Xime'nez)が、これに含まれる。


食前酒やデザートワインとして飲むことの多いヘレスですが、夏のアンダルシアで日没後にお散歩途中でバールに立ち寄って飲むマンサニージャは一段と美味しい。生ビールと同じようにつがれることもあるので、キリっと冷えていて、味わいも爽やか。「マンサニージャ一杯お願い!!」と元気良く注文すると、おぉ判っている日本人じゃないか!?という感じで、どこからか知らないうちに2杯めがおごられたりするのも旅の醍醐味かもしれません。ただし、アルコール度数は16度から21度ありますから、強烈な陽射しで疲れた後の飲みすぎにはご用心。(笑)



では最後に、お勧めのヘレスの紹介を。


Solear
■Solear(Manzanilla)
■Obispo Gasco'n(Palo cortado)
(Antonio Barbadillo)

San Leon
■San Leo'n(Manzanilla)

(Herederos de Argu"eso)

G.Colosi'a
■G.Colosi'a (Moscatel,Pedro Xime'nez,Palo Cortado)
(Bodegas Gutie'rrez Colosi'a)







■Pedro Xime'nez San Emilio(Pedro Xime'nez)

(Emilio Lustau)

■GF Oloroso(Oloroso seco)
(Gaspar Florido Cano)

■Emilio Hidalgo PX(Pedro Xime'nez)
(Emilio Hidalgo)

RoyalAmbrosante
■Royal Ambrosante(Pedro Xime'nez)
(Sandeman-Coprimar)

Fino Quinta
■Quinta(Fino)
Pedro Xime'nez 1827(Pedro Xime'nez)

(Osborne y Ci'a)

■La Ina(Fino)
Amontillado 51-1a(Amontillado)
Capuchino(Palo cortado)
Sibarita(Oloroso)
Venerable(Pedro Xime'nez)

(Pedro Domecq)

■La Cigarrera(Manzanilla)
(Bodegas la Cigarrera)


【参考文献】Vinos de Espan~a,ANUARIO DE LOS VINOS 2001
ご協力してくださった方:KOYA@しぇりークラブ、Santiago Lledo'(Consejo Regulador Vinos Jerez)

現在ヘレス周辺のボデガは80〜90程度です、が、最盛期は500〜900あったと言われています。ところが、残念な事にフランコ時代の英国でのシェリー不買運動を始め、RUMASAの崩壊や、世界的なライト嗜好等で、ここへ来て、シェリーの消費は著しく低下し、資本の多くもスペインでなくなり、当然、政府も「ハモン」や「ワイン」のように積極的な後押しはしないというのが実情です。これは、シェリーファンには非常に残念な事です。KOYA@しぇりークラブ



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