SARAの
コンサートレポート

2001年8月8日〜8月26日

“amargo”  ラファエル・アマルゴ舞踊団

“amargo”  ラファエル・アマルゴ舞踊団
LOPE DE VEGA劇場(マドリード)
ゲストアーティスト イニエスタ・コルテス

 ラファエル・アマルゴの“amargo”は、前回と同様のタイトルだが、
ゲストアーティストの踊り手の変更、バックミュージシャンの変更、
作品の変更等があり、いわば、改正バージョン。

 2時間休憩無しのテンションの高いステージ。
アマルゴと、イニエスタを中心に、10人の踊り手さん達。Rafael Amargo
11人のバックミュージシャンは豪勢。

 一貫したテーマは特にない。“amargo”カラーのステージが展開される。
アマルゴは、若手の踊り手として成長中。踊りは器用で新しい物から
正統派な踊りもこなすし、甘いマスクと体型も恵まれている。
かっこいいけど、親近感のもてる人だ。
だから派手な振り付けや、決めたポーズも嫌味がない、得なキャラクター。
そう、“隣りのおにいさん”みたいなのだ。
そして、道端で、歌いながらちょっとステップ踏んで踊ってみました。
実際、夜のマドリードで友達と遊んでる彼のまんま。
そんな彼が舞台の上で見れる。
気楽に楽しめたステージだった。

 印象に残った所は。
舞踊団は現役バリバリの踊り手さん達で、流石に上手かった。
さらに、ゲストアーティストのイニエスタ・コルテスは堂々としたものだった。
彼女も若手だけど、立派だ。
長年、クリスティーナ・オジョスの舞踊団で培ってきたものが大きいのか。
バタ・デ・コーラ(長い裾の衣装)と一番大きなサイズのマントンを使っても、
危なげなく、上品なアレグリアスを舞ってくれた。
モンセ・コルテスが歌うテーマで、新しい振り付けの境地をみせてくれたが、
最後に、仕掛けが仕組んであり、アマルゴを含む3人の踊り手さんが
脱ぐシーンがある。印象には強ーく残るんだけど。
話題を振りまくのが上手いアマルゴらしい。

 バックミュージシャンで目だったのは、、ピアノのホアン・コルテス。
そして、歌い手では、若手のジョニー・コルテス。
女性の歌い手2人、タマラ・ロペスと、サンドラ・リンコンはヘレスのアーティスト。
高い音域でなかなか面白い味を出していた。
最初の頃は、モンセ・コルテスや、グアディアーナも歌っていたらしいが、
最初の話題作りで、あとは、出演していない。
スケジュールが合わないとかあるのだろうが、
この辺も抜け目のないアマルゴさんだ。

 衣装が曲ごとに変わるのも、ファッションショーを見るかのごとく
華やか。
たくさんの個性の強い、実力派のアーティストに負けない色をもつ
アマルゴは流石。それを自分で良く解ってる人だなと思った。
以外と周りをちゃんと見て、歌い手を、ミュージシャンを、
踊り手一人一人に注意をはらい、皆のテンションを上げていくから
たいしたもの。
アマルゴらしい、といえば、タンゴの動きが上手い。
遊び心があるから、粋。
歌、音楽との兼ね合いのセンスもなかなか。
彼の踊りがどうこうよりも、レベルはもう超一流なのだから、
こんな風にかまえて見なくても見れるFlamencoのショーがあってもいいかな。
と思う。大衆芸能Flamenco。
この辺が、一般のスペイン人に受けた秘訣かも。
後半、ショーは大人気で、何日か公演は延長になった。
さて、“隣りのおにいさん”次は何を見せてくれる?

              Sara Ayako Ishikawa,     

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2001年3月-4月

Sara Baras “Juana La Loca”(Vivir Por Amor)

Sara Baras “Juana La Loca”(Vivir Por Amor)
Teatro Coliseum (コリセウム劇場) (C/GRAN VIA、78 Madrid)

 人気の踊り手、サラ・バラスの新作がマドリードで4月の半ばまで公演中。 “Juana La Loca”は、気狂い王女フアナ。 副題には、Vivir Por Amorとなっている。愛に生きる。

 私が注目したかったのは、脚本と構成。 歴史の事実の一部とされていることを踊りで表現するのは非常にやりがいもある反面、とても難しいと思う。 サラ・バラスの舞踊の実力はトップレベル、そのサラの舞踊団が歴史上の話を公演するのは、話題性も抜群の上、宣伝もテレビやポスターと、大々的だ。

 構成と脚本はとても単純。
 フアナ王女がフェリペ公と結婚するところに始まり、祝いの儀式、結婚式のシーンへ。 ここは大変華やかなシーン。 音楽も大変美しい。 舞踊団の踊り手達のレベルも高い。 他の女性の所にばかり行くフェリペ公に対する、嫉妬のゆえの気狂いじみた身のふるい。 哀しみ、孤独の歌が心に染みる。

 フェルナンド王の死とフェリペ公の死。 しかし、 フェリペ公の子供(カルロス5世)を身篭るフアナ王女。 絶望感…そして…フアナの死が。

 物語の後半からは、振付けのパターン化が見え始める。
 すじを追うだけの脚本で、あっ!と思ったときにはフアナ王女は死んでしまって、幕は降りた。

Sara Baras, Juana La Loca

 この物語を語るのに必要と思われた、イサベル王女とフェルナンド王は、ほんの僅かの登場。 シスネロ摂政、カルロス5世は出てこない。 踊り手達も音楽もせっかく良いのに残念。 物足りないのだ。それでも、美しかったシーンと音楽が頭に残り、足を運んで良かったと思った。

 その後がいけない!
 アンコールが長すぎた。 最初は良かった。 回想するかのように結婚式のシーンの部分を踊ってくれたので、美しかった。 そのあと、サラの独断場になってしまったのだ。
会場は大喜び!

 でも、“Juana La Loca” の余韻にひたっていた私は、がっかり。 2度ひっこみ、3度目も踊った。

 これは大サービスなので、文句を言う筋合いではないけれど、せっかく一つの作品として終わらせたなら、それで終わりにすれば良いと思う。
 それとも、舞踊団のほうでも、作品になにか物足りなさを感じて、アンコールでフラメンコを踊ってしまう時間を長くしたのかもしれない。

 特筆すべきは音楽。 ディレクターはヘスス・デ・ロサリオ。
 特に歌の3人が素晴らしかった。 アントニオ・アマドールとミゲル・デ・ラ・トレアは今のフラメンコ界で実力、人気もトップ。 いつもの実力を発揮。 踊り手、歌い手を兼ねたタリヤ・マリンも大事な所で、なくてはならない女性の声だった。 ギターにディレクター自身と、マリオ・モントージャ。 バイオリンにラウル・マルケス。 パーカーションはペペ・モトス。

 しかし、又、ひとつ文句はある。
全体の中で、1曲だけCDをかけるのである。 こっそりと上手くかけるのだ。
あとで聞いたら、お客さんのなかにはCDだったと気付かなかった人も。
せっかく盛り上ってきたところで一気に素に戻された。
しかも、結婚式のあとのロマンチックな夜のシーンで!?
 これは許せない! いくら良い曲だからといえども!

 踊り手の中では、フェリペ公を踊ったホセ・セラーノ。 この作品の中ではなくてはならない存在。 好演だ。 9人いる舞踊団の中で目立ったのは、ラウル・フェルナンデス。 結婚式のシーンで、切れのある踊りを見せてくれた。

 “織田信長・うつけもの”という歴史上の人物の物語が舞台の作品になったとしよう。 音楽も衣装も素晴らしい。役者にも不足はない。
紙芝居のように物語が展開したら、それはそれで良いですが、物足りなくなりませんか?
うつけものというあだ名の裏に、その時代には斬新なアイデアをもった型破りの男の姿。 全国制覇への執着。野心家。情にあついところも。
明智光秀との出会いや、係わりって重要ではないですか。
いろいろな信長を探してみたいものです。

 はたして、フアナは本当に気狂いだったのかしら?

Sara Ayako Ishikawa  

“Juana La Loca”(VIVIR POR AMOR)のCD。
作品の順番にそって、全曲収録。 Sara Barasの事務所から発売。
Oficina de managemant,produccion y prensa:Mariana Gyalui
. Tel.91 523 28 35/522 53 04 Fax:91 521 81 10
e-mail:marianagyalui@airtel.net URL:http://www.sarabaras.com

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2000年4月-8月

Joaqui'n Corte'sと新作"SOUL"

西暦2000年、4月のマドリード。
Joaqui'n Corte's(フラメンコの踊り手)は、
新作"SOUL"を発表。
そして、それは、私の目からは、実力、名声は同じレベルの踊り手の中で
フラメンコに対する価値観、舞台芸術の面で、
一線もニ線も上のレベルをゆくものに映った。

ホアキン・コルテス

今回、この記事を書くまでに3回、この"SOUL"を見た。
4月のテアトロ・コロセアムと、8月のコンデ・ドゥケにて。
後者は、マドリード中心地にある野外劇場の為、
照明が効果的なシーンや、ホアキンが客席から登場するシーンが
出来ない為、そういったものは、省かれ、既に新しい物に
作り替えられていた。

私はホアキンの"ファン"ではない。
一人のアーティストとして、尊敬して止まない。
フラメンコが何時からか、今のように大きな舞台に登った瞬間から、
フラメンコというジャンルの舞台芸術になったと思う。
例えば、ある人が"これが本物だ!"という歌い手、或いはギタリスト、踊り手と、
とある田舎町で出会ったとしよう。でも、その人を皆に見てもらおうと、
一流の伴奏をつけて大きな舞台にあげた瞬間に、どうしてか、違う物に
なってしまう。

ホアキンは、その辺りを良く心得ている。
家族のフィエスタでも、ペーニャ(フラメンコ酒場)のフィエスタでも、
また何百人収容の劇場でも、自分自身の見せ方、
相手が何を見たいのか知っている。
私自身、前はホアキンの踊りはフラメンコじゃない
なんて、思った過去がある。恥ずかしい。
ステージには、彼のフラメンコに対する、愛でいっぱい。
歌を愛し、ギターの旋律に耳を傾け、コンパス(フラメンコのリズム)を守り、
女性も好きなんだろう、そして自分自身を、自信を持って愛している。
次に、4月のテアトロ・コロセアムの時に書いた"SOUL"についての記事を
スペインのフラメンコ雑誌"alma100"(アルマ・シエン)7・8月合併号より抜粋する。(一部変更)


Joaqui'n Corte's舞踊団、"SOUL"
2000.4.25 マドリード、テアトロ・コロセアム

 ホアキン・コルテスの新作"ソウル"は、マドリードで好評、一ヵ月間常に満員だった。
(2ヶ月目のロング・ランに突入したが、ホアキンが背中を痛め中止)
ホアキンの実力はもちろんだが、作品としてどこから切ってみても良くできているの
に感心する。バックを固めるミュージシャン達は、決して踊りの伴奏としてではなく全
員の音(声)を前面で聞かせてくれる。カンテ(歌)では、"エル・ポティート" ホアキン・コルテス
"ミゲル・デ・ラ ・トレア" "イレネ・モリーナ"の声は特筆。

 女性の踊り手達も、現代的な振付けだとかたづけてしまわれがちだが、効果的な 難しい振付けをこなし、衣装はシンプルでいて、動いた時にとても美しい。

 踊り手の中に、有名女優(ペネロペ・クルス)の妹、モニカ・クルスが花を添え、 話題提供のほうもそつが無く上手いホアキンだ。

 この"SOUL"では、ほとんどのフラメンコのパロ(ナンバー)を見る(聞く)ことがで きる。パソドブレまで!ホアキンが闘牛士を演じ、ムレータで踊る。と言ってしまえば 簡単だが、構成、動きがとても面白く、泥臭い事をやっても、その匂いを残しつ つも、スマートに見せてしまう。(残念ながらこれは、8月の野外劇場ではカット) 最後に演奏されるグァグアンコのリズムには、キューバは ハバナの海岸フィエスタにトリップできる楽しさ。客席の体も揺れる。 リズム隊を支える中心は、" エル・トゥルコ"と"エル・バンドレロ"も特筆。

震えたのは、ホアキンがバタ・デ・コ−ラで踊るマルティネーテ。5メートル以上もある重いバタに髪を結い、
上半身は裸体で、客席から登場。曲が進むにつれ、もう一人の女性が踊っているの
に気付いた。ホアキンの影だった。バックの白のスクリーンに写し出されて踊っている影は、
美しい、しなやかな体を持つ女性が、エレガントにバタ・デ・コーラで舞っていた。
(この曲も、8月の野外劇場では、随分短いものになっていた。スクリーンが置けなかっ
たせいだろう)
たっぷりと2時間ノン・ストップでホアキン・ワールドに誘われた。

石川亜哉子  
月刊フラメンコ情報誌 "alma100"(スペイン)7・8月合併号より。


8月の野外劇場コンデ・ドゥケ(マドリード)にホアキンが戻ってきた時、TBS局の
番組"ZONE"の取材隊がやってきて、ホアキンを取材した時に、私にも声が掛かった。
同じ踊りをやっている身からのホアキン像を語って下さいということだった。
ホアキンに質問をして下さいというシーンもあったりで、じっくりと話す事ができた。
番組がどのくらいの分数を放映をするのか、解らないないけれど。、
ホアキンの実力と、"SOUL"に関しても、どのくらい好きか、どこが好きかを伝え、
自分の踊り手としての悩みを打ち明けた。
(放映は8月下旬か、9月予定)

8月終わりか、9月初めに、彼が主役で、グラナダで撮影の行われた
"GITANO"というタイトルの映画が上映される(スペイン)そうだ。

話している時に、言葉を良く聞こうと、顔をぐっと近ずけている
ホアキンの姿と、視線を決して反らさないのが忘れられない。
話し終わった時、"今日はショーを見ていかないの?"という問いに私が
"いや〜、もう2回見させて頂いたし、う〜〜ん・・・"なんて,もじもじしてたら、
"この子に今日のステージの招待券を渡すように、こんなに踊りが好きなんだから"
と言い、ステージに上がって行った。
その後、案内された席は2列目のど真中。
またまた、視線を反らす事の出来ない位置。
5分前に静かに話していたホアキンは、舞台狭しと踊っていた。

Sara Ayako Ishikawa  

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2000年3月24日

"EL AGUJETAS" Y "TOMASITO Y SU GRUPO"

"EL AGUJETA"

バリバリ、どろどろフラメンコおじさん。あまり乗ってはいなかった。機嫌は悪くなかったんだが。 ちょっとしか歌わなかった。アンコールの時間と同じ位しか歌わなかったように感じた。 良い時とそうでもない時の差がでる人なのは予想していたので、そんなもんかなと聞いていた。 最後の方で歌ったブレリアス(Buleri'as)はOLE'!でした。それで満足です、わたし。

”TOMASITO Y SU GRUPO”

トマティートじゃないよ、トマシート。 ヘレスの若者。 ポップス フラメンコなのか、区別は判らないけど。 CDも出してるんだけど、今一つ、人気が出ない。面白いんだけど、なんだかぱっとしない。 彼自体は好青年で、とても好感が持てる。一生懸命。声量はあまり持ってなくて、下手したら踊りのほうが いいんじゃない?ってくらい踊りが上手い。リズム感抜群。元気。プロデュースが悪いんだろうねって 友達と話した。

 この日は、お酒は進まず、お腹が空くのが気になり、コンサートの後、たらふくご飯を食べて寝る。
 30' Aniversario de フラメンコ Colegio mayor Universitario San Juan Evangelista にて。

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