JOANのカタコト

 

1. フラメンコ反対

 先日のAVUI紙の投書欄に次のような手紙を見つけました。 抄訳すると「他日、私はTV3のバラエティー番組を見て、とても不愉快な思いをした。 「あなたの夏」と題された番組はまるでテレビ化された芸能雑誌のようで、スペインの芸能のオンパレードだった。 …私がテレビ局に抗議の電話をすると、担当ディレクターから丁重に、夏のバカンス中のこの時期にはカタルーニャ人の出演者を探すのが困難なので、90%の出演者はカタルーニャ語圏以外から呼んでいるとの答をもらった。 なぜ私達カタルーニャ人のテレビ局が、こんな状態なのか…私はもうたくさんだ。」といった具合です。

  この中でスペインの芸能については、アンダルシア起源であると以外は述べられていませんが、おそらくフラメンコ系の歌と踊りのことをさしていると思われます。 ふつうテレビ番組に対する投書は、性や暴力が過多だとか、全体の質が低いだとかそういうものかと思っていましたが、これは違いました。 カタルーニャ語放送は、カタルーニャ文化をになうメディアなのだから、スペインの歌舞音曲を流すべきではないという、スペイン文化拒否のメッセージだったのです。 TVEの衛星国際放送では、そういったスペイン文化を世界に向けて流す番組をやっていて、日本からわざわざ見ているファンもいるのというのに、カタルーニャ語圏にはそういった番組を放送したというだけで抗議する人もいるのです。

 もちろんすべてのカタルーニャ人が皆同じように考えているわけではないし、このような意見が多数派とは思えません。でもまた、こういったフラメンコ・闘牛のような外国からはスペインを代表する文化と思われるものに対して、激しい拒絶をする人も少なくない気がします。じゃあカタルーニャ語圏ではそういったものは全く受け入れられていないのかというと、決してそういう訳でもありません。 長年スペイン南部からの移民が多いこともその一因ではありますが、例えばバルセロナには良いタブラオも良い闘牛場もあり、それなりに賑わっているようです。

  問題にされたTV3の番組だって、本当に誰も見る人がいないのだったら、そういうスペイン色の強い番組を作らないだろうに、そのへんもまた不思議なところではあります。もしその同じ番組でフランス人をたくさん呼んできてシャンソン特集でもやったとしたら、たぶんその人は放送局へ電話も新聞社に投書もしなかっただろうし、興味がなければテレビを消すかチャンネルを変えて、それで終わったのではないでしょうか。 この人の敵視しているのは外国文化ではなく、スペイン文化とその押しつけなのです。

 この投書から2つのことを考えさせられました。 ひとつはカタルーニャ語圏では自分達の言語・文化に誇りをもって生きているポーズを取っているものの、現実に大衆文化などの部門に置いてはカスティージャ語およびスペイン文化への依存度がまだまだ高いこと。 そして他方では、こういった反スペイン的なちょっと過激な意見を述べる人に、一体どれほどの国際的な感覚があるのだろうかという疑問です。

 この投書をした人は、サルダーナの番組をずーっとやっていれば満足したのでしょうか。 現実にサルダーナ中継の番組はありますが、私には5分と見ていられないほど退屈なものです。 ともかくも、カタルーニャ語圏におけるスペイン文化に対する愛憎には、非常に複雑なものがあることが感じられます。

 

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