Carmenのスペイン語こぼれ話

10. これでいいのかスペイン語

[最終回]

  皆さん、お久しぶりです。たまに海外逃亡してたけど、大抵は日本の職場で仕事や雑用に追われ、外出しては道草食ってました。今後もこんな生活が続きそうなので、ウエブ連載にもきっちりカタをつけようと最後の力をふりしぼって出てきました。(ちとオーバーですな)

*  *  *

 今回とりあげるのは、最近スペインの携帯のSMS(→ Servicios de mensajes cortos)で使用されている単語の省略形である。スペインでも今や携帯でメールを打つために親指シコシコしてる人々の姿が見られるようになった。それが特に若い人に目立つのは日本と同じだ。

 昨年のスペイン滞在時に初めてプリベイド式携帯を買った私も、SMSにはずいぶん世話になったものだ。各地に散らばる友人に電話で話すほどでもないちょっとしたメッセージを送れるなんて本当に便利な手段である。ただし、送付するメッセージには字数制限がある。それで、たとえばSantiagoをSGO、BarcelonaをBCNと書いたこともあったが、私のように日本でもあまり携帯メールを使わない人間でさえ、こんな省略方法を思いつくぐらいだから、スペインのSMSユーザーがメッセージ用の簡略的な単語を編み出したとて何ら不思議はない。さらに、この種の語彙の省略はすでに英語の世界でもおこなわれていたということを後に知った。

 この簡略語彙がどんなものか知りたい人は、試しにスペイン語のサーチエンジンで "Diccionario SMS"と入力検索してみてほしい。SMSで使われる簡略スペイン語語彙集のようなサイトが簡単に見つかるだろう。この種の語彙はスペイン語圏全域で共通に使われるわけではなくて、あくまでも特定のグループ内での共通語であることが多いらしい。

 でも、どこのサイトを見ても大体似たり寄ったりの語が多いようにも思える。例えば、ers 2? = ?Eres tu'? hla = hola k acs? = ?Que' haces? pf = por favor といった感じ。"Tengo que irme. Adio's. Hasta man~ana. "は "TKI.a2.Hsta mn~a."に化けてしまう。う〜む、読んでいて熱が出そうな「スペイン語」だ。とうとうスペイン語もここまで来たかと天を仰ぐ私。これぞまさしく世紀末、じゃなかった、新世紀のスペイン語。お前はいったいどうなってしまうのか…。

 と、まるでスペインの文法家にでもなった気分で、眉間にしわを寄せながら"Diccionario SMS"の語彙集を見つめていた私であったが、ふと思いついて、正しいスペイン語の表現を紙で隠して、この怪しきSMS用の各語彙に相当する本来のスペイン語の単語を当ててみることにした。

 結果は…けっこう惨憺たる出来だったことを白状しよう。ふん、こんなの完璧に解答できたって全然自慢にならないわよっ! だけど、たとえば、msj というのを見ると、おお、これはmensajeに違いないとすぐに解答を思いつき、それが当たっていたとわかると悪い気はしないものなのだ。もちろんこんなのはスペイン語の邪道中の邪道だとわかっているのだが、言葉遊びとしてはけっこう面白いかも。

 スペイン語話者の大多数が理解できるようにならない限り、将来この種の新語が現在のスペイン語の単語に取って代わることはないだろう。しかし、こういうことばをSMSでやりとりするのは若者が多いことから、彼らの語彙の貧しさを心配する声が教育現場から聞こえているのも事実なのだ。なんだかどこかの国でも聞いたことのあるような話になってきたぞ。

 連載は今回で終わるけど、どこかの国で今日もそしてこれからも正しいスペイン語を教えることに私は精出すつもりだ。と言いながら、友人のスペイン人に "Hla, q tal? Tnes tmpo lbre?"なんてメールを送るようになったのも私なのだが。 ぐふふ、正しいスペイン語も邪道なスペイン語も実は大好きなのさ。こんな私にスペイン語を習ってるということに気づかずにこの文章を読んでるわが愛すべき生徒たちよ、これからもスペイン語のお勉強がんばってね。

   Carmen

 

0. はじめに 

1. スペイン語圏

2. 辞書の話

3. 外来語あれこれ

4. スペイン語のテキスト

5. 性をめぐる話

6. スペイン語の映画

7. 動詞の森にご案内

8. もう一度やりなおしたい

9. セニョリータとお嬢様

10. これでいいのかスペイン語

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