アンダルシアの街
"ヘレス・デ・ラ・フロンテラ"訪問レポート
2月の末から3月の頭の2週間。 毎年この時期に開催される第5回ヘレス・フラメンコ・フェスティバルに行ってきたので、今回はその報告をします。
このヘレスのフェスティバルはスペインで一、二をあらそう大きさと知名度もあり、2週間の間に大小のホールを合わせて40以上のコンサートと20コース以上のフラメンコのクラスが並行して行われます。
地元の祭りというより実際は世界各国のフラメンコ愛好者が参加者のほとんどのパーセンテージを占めており、小さなヘレスの街はインターナショナルな雰囲気となる1週間です。
"1週間参加してみて"
わたしはこのフェスティバルに1週間滞在しました。 1週目に目当てにしていたフラメンコの先生のクラスがあったからです。 申し込みの費用は約4万円です。 これに申し込むと、良くも悪くもヘレスのメイン劇場であるビジャマルタにて毎日行われるコンサートのフリーパスがおまけに付いてきます。 クラス17時間+コンサート6回分ですから特に安いわけでも、高いともいえないでしょう。 外国人にとっては"ふつう"でしょう。 スペイン人にとって、この金額は"高い"です。
さて、わたしのズバリ感想は!?
"楽しかった。 ためになった。 でも疲れた!!!"です。(笑)
なにしろ、1日のスケジュールがバケーションで行くにしてはなかなかいそがしい! 遅くとも9時には起床! 目的の中心はクラスなのだから、11時〜12時は貸スタジオでレッスンの復習を! ここでまじめなわたしに満足!(笑)
一度アパートに帰り、買い物や料理をして軽く食べると3時半にはまた出発し、4時〜6時半はみっちりレッスン!! これが終わると毎日9時のコンサートまで一休みすることもあれば、その合間にも夕刻コンサートがあって、興味あるものであればそれも行ってしまう。
9時〜10時半は毎晩ビジャマルタ劇場でのコンサート。 さらにフェスティバルのプログラムには深夜0時からのコンサートも毎晩企画されていて、それも興味あるものであれば、それも行ってしまう。 そして。。。 そして。。。?
そのコンサートが夜中の2時に終わってもまだ行くところがあるんだな。。。これが。 "ペーニャ"という日本語に意訳すれば"フラメンコ愛好居酒屋"みたいのが開いていて。深夜の2時〜4時頃盛り上がってるので、そこも立ち寄ってしまう。
人間、毎日4〜6時間寝ていれば十分だという。 しかし、一応ちょっと激しい運動もしてるし、コンサートだって座っているだけなんですけど、1日に3つのコンサート見るのって結構大変です。(笑) 1日の情報量が多すぎるんですよね。。。
しかも、体の中には休憩ごとにヘレス産のすてきな液体、つめたく冷やされたシェリー酒がスルスルっと入ったりしてるので朝、体と頭はなかなかわたしの思い通りには活動しなかったりもする。 こんな生活をおくっていたので、あっ!という間にわたしの1週間のバケーションは過ぎていった。
"クラスの感想"
さて、わたしは泣く子もだまるベテラン先生陣の中からマノロ・マリンという舞踊家のクラスを取ることにした。 人気の中堅、若手の人のクラスはこれから先でも取れるチャンスはあるだろうが、60歳前後のベテラン陣はいつ引退があってもおかしくないので、取れるときに取っておきたかった。
習ってみたい先生はたくさんいたが、今回の場合、自分の舞踊スタイルとかけ離れたものではないが、何か違うもの、新しいスタイルと高度なテクニックを持つマノロのクラスを取ることにした。 ヘレス独特の踊りを教える先生陣にも人気が集まるが、わたしのスタイルとは違うものなので、こういったものは、余裕のあるときに少しずつ遊び感覚でまじめに習うことにしている。
さて、実際、クラスでは振り付けなどが大変テクニカルで、初日は彼のスタイルもつかめず、本当に冷や汗をかくとはこういうものだと実感した。 2時間半、踊っても、踊っても、汗もかくことが出来ず。 どんどん顔がかたまった表情になっている自分に気がついた。
2日目からはレッスン前の自習も助けになり、足のスピードや振りのつながりが悪くとも、振り付けの意味や、マノロのスタイル、主義も理解しだし、落ち着いてレッスンに励んだ!
わたしにとって、古いフラメンコは偉大だ。 歌い継がれたりするフラメンコは、現代の生活の中で本当の姿で残っていくのが難しい。
68歳(たぶん)のベテラン舞踊家マノロ・マリンは少なくとも60年間プロとして意識しながらフラメンコを感じて、勉強して、踊って伝えてきたのだろう。 いま旬の20代のバリバリの舞踊家達はマノロよりもっとかっこいいだろう。 もっと強くて、速い足を打つことが出来るだろう。 新しい動きも取り入れてるだろう。 これもフラメンコにとって素晴らしい財産だ。 でも、いまのわたしには目で楽しませてもらうだけで十分だ。 いまは古いフラメンコをできるだけ吸収しておきたいのである。
"ヘレスの街・人・食べ物 etc."
ヘレスの街はこじんまりしていて、たいていのことだったら歩いて用事は済む。 こぎれいでクラシックで、わたしはアンダルシアの中ではグラナダ、コルドバに並んで好きな街だ。 人々も普通に人なつっこく、わたしの住むグラナダのように人なつっこいが一癖ある人々ではなさそうだ。
食もなかなか気を遣っていて豊かだと思う。 美味しいワインを持つ土地は食物にもちゃんと気を遣うのだろう。 先ほどにも書いたとおり、シェリー酒(スペイン語ではヘレスあるいはマンサニージャ)の産地でボデガ(ワイン醸造所)も街の中にたくさんあり、一度見学に立ち寄るのも悪くないアイデアだと思う。
そして、わたしからのかなりのおすすめは、国立馬術学校である。 ここでは週に2回だけ、素晴らしく訓練されたヘレス産の馬たちのショーが楽しめます。 3000円くらいなので、もしヘレスに立ち寄ったら、ケチらずに他でケチってこれを見ることをお薦めします。 "踊る馬たち"の題名のごとく、馬のダンスが見れます。 特に馬好きでなくても良いと思います。 美しい映像と本物の芸術は頭の中の記憶に何かの形で永遠に残ることでしょう。
それと。
小さなバールで美味しいところもたくさんあったけれど、日本から行く人のためにお勧めレストランを2つほど書いておきます。
アルコス通りにあるカサ・パコ。 普通のレストランですが、何でも普通においしい!です。 ヘレス独特の豆の煮込み料理ベルサのような家庭料理もあります。 "普通"を探すのって意外と難しい。。。ですよね!?
もう1つは、フランコス通りのカサ・デ・アロスです。 米料理、つまりパエジャがとにかくおいしいです。 普通のパエジャはもちろん、スープたっぷりのタイプもあります。 また、魚介、イカスミなど具も選んで注文します。 パエジャは出来上がるまでに20分〜30分かかるので、軽く前菜と美味しいワインでも頼んで待ち、ゆっくりと食事を楽しんでください。 手作りのデザートまで頼んで、ご予算4000円〜6000円ってところでしょうか。 今回、ここは友人に教えてもらいました。 10年以上のスペイン生活でパエジャベスト3に入るおいしさでした。
ヘレスからカディス行きの電車で10分も行くとプエルト・デ・サンタ・マリアという港町に到着。 プラプラっと立ち寄るのが好きです。 夕食は"ロメリオ"というシーフードレストランで決まり! ゆでたり、揚げたりした魚たちをショーウインドで好きなだけ買って、それをテーブルに持って行ってガンガン食べるシステムが"グー"(Good!!)です。
さらにカディス方面にまた15分電車に乗るとサン・フェルナンドに到着。 フラメンコの伝説の歌い手、カマロン・デ・イスラのゆかりの地です。 カマロンが無名時代に歌っていた店、ベンタ・バルガスやカマロンの銅像があったりします。 めったにカメラを持って歩かないわたしですが、ここだけはカマロンと一緒に写真を撮って大満足でした。
"大人達の修学旅行"
今回、フラメンコ習得を目的として食住を共にした友人が2人。 寝るところは違っても同じ経験をした友人が2人。 わたしにとっては大事な4人の友人達と同じ1週間を過ごした。
育った環境も、価値観も違った5人がフラメンコというキーワードだけで一緒だったわけだ。 自分のペースをゆうゆうと守る者、疲労がたまり体調を崩す者、思わず涙を流す友人に胸が痛んだ。 5人がそれぞれだった。
全員が"この1週間は最高だと5人全員が思った"とまとめるのは偽りがあると思う。 それぞれが、自分の出来ると思っていたことが出来なかったり、何か苦しい思いをしただろう。 30を過ぎて、外国に好きなことを習いにこれる幸運の中にいて、涙を流すことになろうとは!?
でも、わたしはそれをバネにして頑張って欲しいと思う。 人生ってだんだん生き方が変に上手になって、感情を隠して生きるより、くやしいとか、こんなはずではなかったというのはとても人間らしい一面とも言えるし、なんだか子供の頃みたいでちょっとすてきじゃない!?
それぞれがそれぞれの問題、課題を抱えて生きていて、1週間だけそれとは別の世界で共通の時間を過ごした。 また、1年後あるいは5年後、10年後に出会ったら、成長していて。。。でも、また違うことで悩んだりしているのだろう。
というわけで、30歳以上の女達5人の修学旅行は泣いたり、笑ったりで終了しました。 ただし、小さい頃と違うのは、必ずシェリー酒付きだったことですかね。
あっ?? あと、しわが増えているって?!! 余計なお世話。 はい、さいなら。
|