ちょっと前のわたしたち

【No.257】4月4日 Maki * 【No.258】4月11日 SARA
【No.259】4月25日 かおる

No.259

4月25日 かおる(マドリード)

 春という季節は寒い冬を乗り越えた生命力にあふれているはず・・なのだが、どうもこの季節の私は不安定だ。

 日本にも5月病などという言葉があるが、体内の時計がうまくかみ合わないのかもしれない。 日本の5月病は新しい環境に適応できない適応障害が主な原因だったと思うが、スペインでは年度初めというわけでもない。

 でも、春に適応障害を起こすという現象はどうも私だけではないようだ。 「春なのにどうも疲れる、やる気がない・・という方に」という乳酸健康飲料のCMもスペインで流れている。 スペインでのそれは、3月末から始まるサマータイムとそれによって感じる1日の長さも影響している、のだそうだ。

 加えて春はお祭りが続く。 その皮切り、セマナ・サンタと呼ばれるキリストの復活を祝う祭はこのスペインでは最大のお祭りの一つだ。 この祝日の日程は日にちでなく曜日で決められるため、必ず毎年週末をはさんだ4連休になる。 クリスマス、年始の休暇から、大型連休に飢え、天候がよくなってくるこの時期まで待ち続けてきた人たちは、ここぞとばかり行楽にでかける。

セマナ・サンタ
写真1. セマナ・サンタ
 セビージャなどの都市ではこのセマナ・サンタは街中が「お祭りに生きる」という感じだけれど、マドリードではそれほど祭り気分は盛り上がらない。 むしろ、みんなマドリード脱出をはかるため、町は静まりかえる。

 そんなマドリードに住む私のセマナ・サンタの過ごし方は概ね「自宅でゆっくり」だ。 せっかく自宅で時間があるのだから、このチャンスを生かしていつもはできないちょっとした家の修理や、縫い物や、思い切った掃除、整頓をしよう!と心では誓い、計画もそれなりに立てるのだが、だらだらすごしているうちにあっという間に4日間は過ぎていく。

 「たまには、だらだらするのもいいでしょう」と自分に言い聞かせても、「またできなかった(やらなかった)」という罪悪感はぬぐえない。 それとも欲張りすぎて計画を立てすぎるのか。 意気込みだけは最初はあるのだが。

 スペイン語でラチャと呼んだりするが、気持ちのムラはどうもこの季節に多いような気がする。 そういえば、今日も霙が降ったり、青空が出たり気まぐれなお天気だった。 この気まぐれな天候も私の集中力のなさに影響しているのかもしれない。

 やりのこしたことはあるけれど、、5月の連休もあるさ。 そのときは、私に働き者でやる気満々のラチャが吹いていますように。

 

 

No.258

4月11日 SARA(グラナダ)

アンダルシアの街
"ヘレス・デ・ラ・フロンテラ"訪問レポート

 2月の末から3月の頭の2週間。 毎年この時期に開催される第5回ヘレス・フラメンコ・フェスティバルに行ってきたので、今回はその報告をします。

 このヘレスのフェスティバルはスペインで一、二をあらそう大きさと知名度もあり、2週間の間に大小のホールを合わせて40以上のコンサートと20コース以上のフラメンコのクラスが並行して行われます。

 地元の祭りというより実際は世界各国のフラメンコ愛好者が参加者のほとんどのパーセンテージを占めており、小さなヘレスの街はインターナショナルな雰囲気となる1週間です。

"1週間参加してみて"
わたしはこのフェスティバルに1週間滞在しました。 1週目に目当てにしていたフラメンコの先生のクラスがあったからです。 申し込みの費用は約4万円です。 これに申し込むと、良くも悪くもヘレスのメイン劇場であるビジャマルタにて毎日行われるコンサートのフリーパスがおまけに付いてきます。 クラス17時間+コンサート6回分ですから特に安いわけでも、高いともいえないでしょう。 外国人にとっては"ふつう"でしょう。 スペイン人にとって、この金額は"高い"です。

 さて、わたしのズバリ感想は!?
"楽しかった。 ためになった。 でも疲れた!!!"です。(笑)
なにしろ、1日のスケジュールがバケーションで行くにしてはなかなかいそがしい! 遅くとも9時には起床! 目的の中心はクラスなのだから、11時〜12時は貸スタジオでレッスンの復習を! ここでまじめなわたしに満足!(笑)

 一度アパートに帰り、買い物や料理をして軽く食べると3時半にはまた出発し、4時〜6時半はみっちりレッスン!! これが終わると毎日9時のコンサートまで一休みすることもあれば、その合間にも夕刻コンサートがあって、興味あるものであればそれも行ってしまう。

 9時〜10時半は毎晩ビジャマルタ劇場でのコンサート。 さらにフェスティバルのプログラムには深夜0時からのコンサートも毎晩企画されていて、それも興味あるものであれば、それも行ってしまう。 そして。。。 そして。。。?

 そのコンサートが夜中の2時に終わってもまだ行くところがあるんだな。。。これが。 "ペーニャ"という日本語に意訳すれば"フラメンコ愛好居酒屋"みたいのが開いていて。深夜の2時〜4時頃盛り上がってるので、そこも立ち寄ってしまう。

 人間、毎日4〜6時間寝ていれば十分だという。 しかし、一応ちょっと激しい運動もしてるし、コンサートだって座っているだけなんですけど、1日に3つのコンサート見るのって結構大変です。(笑) 1日の情報量が多すぎるんですよね。。。

 しかも、体の中には休憩ごとにヘレス産のすてきな液体、つめたく冷やされたシェリー酒がスルスルっと入ったりしてるので朝、体と頭はなかなかわたしの思い通りには活動しなかったりもする。 こんな生活をおくっていたので、あっ!という間にわたしの1週間のバケーションは過ぎていった。

"クラスの感想"
さて、わたしは泣く子もだまるベテラン先生陣の中からマノロ・マリンという舞踊家のクラスを取ることにした。 人気の中堅、若手の人のクラスはこれから先でも取れるチャンスはあるだろうが、60歳前後のベテラン陣はいつ引退があってもおかしくないので、取れるときに取っておきたかった。

 習ってみたい先生はたくさんいたが、今回の場合、自分の舞踊スタイルとかけ離れたものではないが、何か違うもの、新しいスタイルと高度なテクニックを持つマノロのクラスを取ることにした。 ヘレス独特の踊りを教える先生陣にも人気が集まるが、わたしのスタイルとは違うものなので、こういったものは、余裕のあるときに少しずつ遊び感覚でまじめに習うことにしている。

 さて、実際、クラスでは振り付けなどが大変テクニカルで、初日は彼のスタイルもつかめず、本当に冷や汗をかくとはこういうものだと実感した。 2時間半、踊っても、踊っても、汗もかくことが出来ず。 どんどん顔がかたまった表情になっている自分に気がついた。

 2日目からはレッスン前の自習も助けになり、足のスピードや振りのつながりが悪くとも、振り付けの意味や、マノロのスタイル、主義も理解しだし、落ち着いてレッスンに励んだ!

 わたしにとって、古いフラメンコは偉大だ。 歌い継がれたりするフラメンコは、現代の生活の中で本当の姿で残っていくのが難しい。

 68歳(たぶん)のベテラン舞踊家マノロ・マリンは少なくとも60年間プロとして意識しながらフラメンコを感じて、勉強して、踊って伝えてきたのだろう。 いま旬の20代のバリバリの舞踊家達はマノロよりもっとかっこいいだろう。 もっと強くて、速い足を打つことが出来るだろう。 新しい動きも取り入れてるだろう。 これもフラメンコにとって素晴らしい財産だ。 でも、いまのわたしには目で楽しませてもらうだけで十分だ。 いまは古いフラメンコをできるだけ吸収しておきたいのである。

"ヘレスの街・人・食べ物 etc."
ヘレスの街はこじんまりしていて、たいていのことだったら歩いて用事は済む。 こぎれいでクラシックで、わたしはアンダルシアの中ではグラナダ、コルドバに並んで好きな街だ。 人々も普通に人なつっこく、わたしの住むグラナダのように人なつっこいが一癖ある人々ではなさそうだ。

 食もなかなか気を遣っていて豊かだと思う。 美味しいワインを持つ土地は食物にもちゃんと気を遣うのだろう。 先ほどにも書いたとおり、シェリー酒(スペイン語ではヘレスあるいはマンサニージャ)の産地でボデガ(ワイン醸造所)も街の中にたくさんあり、一度見学に立ち寄るのも悪くないアイデアだと思う。

 そして、わたしからのかなりのおすすめは、国立馬術学校である。 ここでは週に2回だけ、素晴らしく訓練されたヘレス産の馬たちのショーが楽しめます。 3000円くらいなので、もしヘレスに立ち寄ったら、ケチらずに他でケチってこれを見ることをお薦めします。 "踊る馬たち"の題名のごとく、馬のダンスが見れます。 特に馬好きでなくても良いと思います。 美しい映像と本物の芸術は頭の中の記憶に何かの形で永遠に残ることでしょう。

 それと。
小さなバールで美味しいところもたくさんあったけれど、日本から行く人のためにお勧めレストランを2つほど書いておきます。

 アルコス通りにあるカサ・パコ。 普通のレストランですが、何でも普通においしい!です。 ヘレス独特の豆の煮込み料理ベルサのような家庭料理もあります。 "普通"を探すのって意外と難しい。。。ですよね!?

 もう1つは、フランコス通りのカサ・デ・アロスです。 米料理、つまりパエジャがとにかくおいしいです。 普通のパエジャはもちろん、スープたっぷりのタイプもあります。 また、魚介、イカスミなど具も選んで注文します。 パエジャは出来上がるまでに20分〜30分かかるので、軽く前菜と美味しいワインでも頼んで待ち、ゆっくりと食事を楽しんでください。 手作りのデザートまで頼んで、ご予算4000円〜6000円ってところでしょうか。 今回、ここは友人に教えてもらいました。 10年以上のスペイン生活でパエジャベスト3に入るおいしさでした。

 ヘレスからカディス行きの電車で10分も行くとプエルト・デ・サンタ・マリアという港町に到着。 プラプラっと立ち寄るのが好きです。 夕食は"ロメリオ"というシーフードレストランで決まり! ゆでたり、揚げたりした魚たちをショーウインドで好きなだけ買って、それをテーブルに持って行ってガンガン食べるシステムが"グー"(Good!!)です。

 さらにカディス方面にまた15分電車に乗るとサン・フェルナンドに到着。 フラメンコの伝説の歌い手、カマロン・デ・イスラのゆかりの地です。 カマロンが無名時代に歌っていた店、ベンタ・バルガスやカマロンの銅像があったりします。 めったにカメラを持って歩かないわたしですが、ここだけはカマロンと一緒に写真を撮って大満足でした。

"大人達の修学旅行"
今回、フラメンコ習得を目的として食住を共にした友人が2人。 寝るところは違っても同じ経験をした友人が2人。 わたしにとっては大事な4人の友人達と同じ1週間を過ごした。

 育った環境も、価値観も違った5人がフラメンコというキーワードだけで一緒だったわけだ。 自分のペースをゆうゆうと守る者、疲労がたまり体調を崩す者、思わず涙を流す友人に胸が痛んだ。 5人がそれぞれだった。

 全員が"この1週間は最高だと5人全員が思った"とまとめるのは偽りがあると思う。 それぞれが、自分の出来ると思っていたことが出来なかったり、何か苦しい思いをしただろう。 30を過ぎて、外国に好きなことを習いにこれる幸運の中にいて、涙を流すことになろうとは!?

 でも、わたしはそれをバネにして頑張って欲しいと思う。 人生ってだんだん生き方が変に上手になって、感情を隠して生きるより、くやしいとか、こんなはずではなかったというのはとても人間らしい一面とも言えるし、なんだか子供の頃みたいでちょっとすてきじゃない!?

 それぞれがそれぞれの問題、課題を抱えて生きていて、1週間だけそれとは別の世界で共通の時間を過ごした。 また、1年後あるいは5年後、10年後に出会ったら、成長していて。。。でも、また違うことで悩んだりしているのだろう。

 というわけで、30歳以上の女達5人の修学旅行は泣いたり、笑ったりで終了しました。 ただし、小さい頃と違うのは、必ずシェリー酒付きだったことですかね。

 あっ?? あと、しわが増えているって?!! 余計なお世話。 はい、さいなら。

 

 

No.257

4月4日 Maki(横浜)

La Oreja de Van Gogh(ラ・オレハ・デ・バン・ゴッホ)

という名のスペインのバンドが以前からお気に入り。
「ゴッホの耳」という不思議な名前のポップスグループ。

ゴッホが片耳を切り落としてゴーギャンに送った?とか
なんとかいう話が元になっているともいわれるけど、詳しいことはよくわからない。
スペイン本国はもちろん中南米でも大人気で、ここ数年は日本でもライブを行い、愛地球博にも来てたらしく、意外と日本でも隠れファンは多いそうだ。

初めてオレハの曲を聴いたのは、2000年のスペイン滞在中。
当時、彼らの2作目?のアルバム"El Viaje de Copperpot"が大ヒットしていて、カフェでもディスコでも、どこでもよくかかっていた。 つい口ずさんでしまうノリのいいメロディ、パンチのきいた女性VocalのAmaiaのハスキーだけど可愛い歌声、切ないエッセイみたいな歌詞、すべてが私好みで、日本帰国時にはもちろんそのCDを買って帰った。

このアルバムがとってもよかったので、その後ネットで1作目?のアルバム"Dile al Sol"を買い、一昨年は3作目の"Lo que te conte' mientras te haci'as la dormida"を買った。 今のところこのアルバムが私のNo.1。  題名の意味は直訳すれば
「あなたが寝たふりしてる間にあなたに話したコト」って感じかな。

で、つい最近、このアルバムをひっさげてのツアーを収録したライブCD&DVDセットをネット通販で見つけて買った。 セットでもお値段2500円弱。これはお買い得! 観客の声や拍手、観客も参加してのコーラス、曲間のトークなど、 ライブならではの臨場感があって、なかなかよろしい。
あ〜インターネットって便利ね。

不思議なことに、この3作目のアルバムは帰国後何年か経って、しかも日本で買ったものなのに、聴いているとマドリードの風景が浮かび、滞在中のことを思い出すことが多い。
それは、たぶん歌詞のせい。La Oreja de Van Gogh

例えば1曲目のサビに出てくるフレーズ。
"las tardes de invierno por Madrid, las noches enteras sin dormir,..."
(マドリードの冬の午後、眠らずに明かした夜・・・)

例えば2曲目のサビの途中。
"la madrugada del 20 de enero saliendo del tren..."
(1月20日の明け方、列車から降りていく・・・)

など、この辺りの歌詞が、なぜか冬のマドリードの街並みや、まだ薄暗いうちに朝一番の列車やバスに乗るためにホームに向かった日々を思い出させるのだ。
ほかにもたくさん懐かしさを感じさせるフレーズがある。

Amaiaの発音はLやRの区別もはっきりしていてわかりやすいので、ヒアリングの練習にいい。それに、とても共感できる身近な内容で、単語や表現も意外と普段使いの簡単なものが多いので覚えやすく、歌詞カードを読むだけでもかなりスペイン語の勉強になる。
もちろん歌って覚えた表現は忘れにくいし。

ホント、習うより慣れろ、とはうまく言ったものだ。
英会話がダメダメなままの私にとって、スペイン語の歌が聞き取れる、それも、頭の中で訳すのではなく、スペイン語のままですっと頭にイメージが浮かぶ嬉しさといったら・・・
もう言葉では言い表せない!

オレハはスペイン語わからない友達にも半強制的に勧めてるけど、みんな気に入ってくれている。 基本的に日本でもウケる曲調だし。
スペイン=ラテンというイメージを持ってる人にもぜひ聴いてみて欲しいな。

・・・なんだか、単なる音楽レビューになっちゃったね。

 

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