ちょっと前のわたしたち

【No.224】5月10日 Sara * 【No.225】5月24日 かおる
【No.226】5月31日 むく

No.226

5月31日 むく(マドリード)

 5月4日に京都で開催されたスペイン語科、正確には外国語学部言語学科スペイン語専修、の大同窓会に出席してきた。 以前、この欄に書いたように、恩師の退官の慰労会を兼ねた同窓会である。 昭和48年の卒業生から平成14年の卒業生まで、総勢160数名もの同窓生が北は北海道、南は九州、果てはスペインから(私)と全国各地から集まったのである。

 何年ぶりか出会う人、卒業以来初めて会う人、今回が初対面の人など様々であったが、スペイン語を学んだという共通点があり、ひとしきり話があちこちで弾んでいた。 卒業が同期の人は誰も来ていなかったが、入学が同期で卒業は私よりずいぶん後という、同じ家に下宿していた者が出席していた。 同期とは全く付き合いはないが、やはりそれなりに懐かしいものである。

 今回、同窓会の前日に京都入りし、大学4回生の時にアルバイトをしていたホテルにチェックインした。 当時とは経営者も代わり、ホテルの外は当時の面影はあるものの、内部は全く昔の面影が残っていない。 まぁ、当然のことではあるが。

 京都の街並みもずいぶん昔と変わったものである。 数年前に京都を訪れた際にも昔の面影が全然ないのに愕然とした思いがある。 今回、昔の下宿や先輩たちが住んでいた下宿の周りを車で案内してもらい、今更ながら変化の急激さに驚いたものである。

 当時の下宿は田んぼに建てられた一軒家で、真ん中が廊下で両側に4畳半の部屋が並んでいるといったものが主流であった。 共同風呂は一日おき、トイレ、台所は共用、エアコンは当然なし。冬は隙間から雪が入り込み、夏はじっとしていても汗が滝のように流れるといった状態であった。

 最近はそのような下宿はない、借りる人がいないと聞いた。 プライバシーが保てないような貸家、部屋は時代に合わないということらしい。 当時お世話になった下宿も、驚いたことに大学の研修所になっていた。

 他の大学も優遇措置を得てキャンパスを京都市内から移したりで、学生の数も減っているらしい。 京都は学生でもっていたのに、キャンパスの移転をみすみす許してしまう市制はおかしいと、京都出身の先輩はなげいていた。学生の町、京都はもう過去の遺物ということか。


追記:京都駅も大きく変わった。 評判は様々なようであるが、個人的にはあのちょっと幾何学的な、なんとなく未来風な建物は気に入っているものの一つである。


No.225

5月24日 かおる(マドリード)

 スペインで春先に桜のような花で楽しませてくれるのがアーモンドの木。
  初夏の季節になると、実をつけ始める。実っているアーモンドの実
  お花見で楽しませてもらった公園のアーモンドの木もこのように実をつけ始めた。

 食べておいしいアーモンドと、おいしくないアーモンドなど、種類にもいろいろあるらしいが、この公園のアーモンドはどうやら食べてもおいしいアーモンドのようだ。 まだしっかり熟していないころからアーモンド狩りを兼ねて散歩する人が公園をたむろしている。
  低めのところはすっかり実をもぎ取られてしまっている。
  アーモンドとして食べられる部分は、種。その果実全体は、桃や杏の種を思い浮かべてもらえればよいかもしれない。 もちろん、桃や杏のようにおいしい果肉はないのだけれど。厚めの産毛のある皮に包まれた果実の中には硬い殻に包まれた種。 この殻を破るとアーモンドが出てくる、というわけ。

実をむいたアーモンド 村に住む知人から、アーモンドがたくさん実ったから、と殻つきのアーモンドをたくさんもらったことがあるが、この殻を割って中身を取り出すのは一苦労。
  この公園のアーモンドも皮をむいて、殻を取り出して、殻を割ってきれいにアーモンドを取り出すのは(たいがい、普通に金槌などで殻を割ると、その時点で中のアーモンドも割れてしまう)至難の業。

殻の中のアーモンド 散歩の途中で少しかじってみる、というのならわかるとしても、夕方で人がはける頃になると、ショッピングカートまで持ち込んで、木を杖ではたいてまでアーモンドを収穫しようとする人たちまでいる始末だ。 後が大変だろうに、そんなに採ってどうするんだろう・・買ってもそんなに高くないのに、とは余計なお世話なのかもしれない。

 さて、アーモンドというと、一度挑戦したかったのが、杏仁豆腐。 日本にいるころから好きなデザートだったけれど、こちらに来てもとにかく、中華料理レストランでも見当たらない。 アーモンドはふんだんにあるのだし、自分で作ってやろうとインターネットで作り方を検索すると、あるある。

 杏仁というのは、アーモンドとは違う、という説もあるようだが、まあいいでしょ。 生のアーモンドをミキサーで砕いて、ガーゼで漉して寒天で固めると、なんとスペインでも立派に杏仁豆腐ができるのだ。 しかもよくありがちな、杏仁豆腐ならぬミルク寒天とは違って、こってりたっぷりアーモンドの香りのするほんとうに本格的な杏仁豆腐。最近のマイブーム、かもしれない。(興味のあるかた、ぜひトライしてみてください。 ほんとにちゃんとできますよ。)

 

No.224

5月10日 Sara(グラナダ)

 

伝統が失われていくー。

5月3日はDI'A DE LA CRUZ(ディア・デ・ラ・クルス)でした。
十字架の日、とでも訳すのだろうか。 グラナダは休日で
広場には十字架が花で飾り付けられ、特設屋台も設けられ、
市民は華やかなフラメンコ衣装で着飾り、ビールを片手に
セビジャーナス(セビリアの民謡)を踊りまくる日だ。

子供から大人までかなりの人々が衣装を着るので、
5月ですでに暑い陽気のアンダルシアの小さな都市は
一気に花が満開になったような華やかな明るいムードが
ただよう。少なくとも十年前までは。。。。。。

ところが、年々物価の値上げが原因なのか、国の作戦なのか、
とにかく祭りというのはしょぼくれていくのである。
毎年、衣装を着る人の人数が格段に減っていくのである。
気付いたら、今年は、もうなんだか外に人々があふれて飲みまくるだけの
お祭りと化していた。

今年は更に目だってもうお祭りは昔の姿を残していなかった。
今年は、丁度その時期がスペインの連休にあたり、
地方からの人々でグラナダは満杯だった。

ビールにおかずがオマケで付いてくることや、夜が賑わうことが
アルハンブラ宮殿と同じくらい有名なグラナダである。
ところが、集った若者達は特設屋台のビールでは飲み足らず、
ビニール袋にありとあらゆるアルコール飲料を抱えて街を占拠した。
スペインではボテジョンという言葉がある。ボテジョンの若者達で
街は溢れかえった。

年々衣装を着る人が減った上に、ボテジョン若者の占拠とあって、
グラナダの中心地ではセビジャーナスを踊る姿さえほとんど見られなかった。

しかも次の日のグラナダ中心地の細い路地という路地は、
前日に若者達の公衆トイレとなっていたので匂いがたまらなかった。
市民は自分の家や店の前に消毒液を撒いて掃除する羽目になった。
伝統のお祭りの姿が薄れるわ、街は汚くなるわでいったいなんの日だったの
だろうと古い伝統を守る市民は胸を痛めている。

グラナダでは5月の後半にフェリアもあるのだが、これも実は問題になっている。
普通はセビジャーナスを踊る特設テントが何百と設けられるのだが、
今年は、特設テントを設置するための費用を市が吊り上げたために、
テントを出す側が 全員で拒否してるらしい。

今のところはグラナダ市が出す25くらいの特設テントが
設けられるだけらしい。 これでは、お祭りは潰れたも同然である。
どうやらこうやって、伝統は失われていくのだ。失われだすとスピードは早い。
小学生の頃毎年行っていた盆踊り大会がいつ消滅したのかわからない。
きっとこうやって年々カットされていって、ある日これでは意味がないとかいって
完全に消滅していくのだろうか。

胸が痛い。
フラメンコもセビジャーナスやお祭りと同じ、とは言わないが
肩を並べて手をつないで生きている。
お祭りが無くなると、人は笑顔を失っていく。
働かせようという政府の作戦なんだろうけど、悲しいことだ。

皆、働いて毎年高くなっていく家を購入する。新しい車を購入する。
ローンに追われて街角で立ち止まって地ワインを飲みながら
老人の言葉やフラメンコの歌の一節に立ち止まる人はいなくなる。
時間と心に余裕が無いからだ。 物価も上がって生活の余裕も少なくなってゆく。
学費に精一杯で成長期の娘に今年限りの水玉の衣装なんて買う余裕はない。

ああ。 昔こんなフレーズがどこかにあったかな。
世界よ、そんなに急いでどこへ行く???????

 

 

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