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“猫はしゃべらない” 〜マノーロさんよ、永遠に〜
十月にマドリードからグラナダに引っ越し、二週間たたないうちに七年間共同生活してきた猫、MANOLO(元名はMANOLETE=マノレーテ)が逝ってしまった。私のスペイン生活が八年過ぎて九年目なのでマノロは私のスペイン生活では一番長い付き合いの一人だった。(笑)
マノーロさんに追悼の意を込めて。
*グラナダ、アルバイシン生まれのマノーロ
マドリードからグラナダに越した、と書いたけれど、私はもともと八年前 グラナダに住んでいたのでマノーロはグラナダの猫でした。拾った場所柄、生まれは世界遺産地区のアルバイシン。たぶん小さい頃から良く言えばお人よし、悪く言えば“とろい”猫なので、アルハンブラ宮殿の見えるサン・ニコラス展望台で出会った時は他の猫との喧嘩に負けて瀕死の重態だった。動物保護センターの獣医に見てもらったけど「今夜が峠です」と言われ、「ニャン」とも泣かないぐったりした猫を玄関において一晩過した。しかし、翌朝起きてみたらなんと「ニャン」と泣くではないか。まあ、これは良かったと最初の餌をあげた。
マノーロは青い目の綺麗なシャム猫でそのころ推定七ヶ月。かわいいとは思ったけど動物を飼うと大変だし、どちらかというと私は犬派(犬が好きってことです)なので、飼主探しを始めた。
二、三週間経った頃“とろい”マノーロが家に入った虫けらに向かって勇敢に戦っている姿が面白くてしかたなかった。虫けらに向かって闘牛士のごとく立ち向って行く様子にとうとう名前をつけてしまった。“マノレーテ”。闘牛場で勇敢に命を落とした名闘牛士の名前を。
それからマノレーテは先月まで私と暮すようになる。
*マノーロとルミとの共同生活
マノーロと暮して一年目。マノーロは恋をした。毎朝マノーロの座っている窓の下に通ってくるアルバイシン猫。まだ四ヶ月くらいのトラ柄の猫。典型的な野良猫。貴方はシャム猫なのと言ったところで二人の愛はとめられない。ある早朝五時、私はドアを開けて彼女を朝食に招待した。それからも毎朝通ってくる彼女に負けて、一匹も二匹もいっしょだあ!と二人の結婚を許した私でした。(彼女には、ルミという名をつけました)
それから、私とマノーロとルミは同じ家に住みました。ルミが来てから二年程してマドリードに皆で引っ越しました。留守がち、いや、ほとんど家には寝に帰るだけだったその頃の私でしたので、家の主はどちらかというと彼等でした。「あら、久しぶり〜」という感じで二人とも玄関にいつも迎えにきてくれたものです。二人は非常に仲の良い夫婦でたまに帰ってきた私の方がお邪魔ですか?という感じさえしたものです。
*ルミの逃亡
一年ほど前から、今度は私も恋をして、家に男を連れ込んだ。四人の生活が始まった。
今までは私と猫は三人でベットで川の字になって寝たものだが、新しい男はそれを許さなかった。まあ、正直いって邪魔(笑)だし、なんせ結構、毛だらけなのだ。ベットとソファーは猫侵入禁止となった。ほぼ七年間OKだったのに、急にダメって言われても猫にはなんの事やらわからないらしかった。マノーロさんは籠ベットを作ってもらってそれでも満足していたが、ルミは非常に怒っていた。
二ヶ月前だろうか、ある日扉を開けっぱなしにしてしまったら、飛ぶようにして家出してしまった。逃げてしまったのである。
*マノーロの衰退と入院
ルミさんがいなくなってからマノーロは一気に老けた。もともと病気がちの猫だったが、全ての病気がすすんだ。私も結婚と引っ越しを決意して忙しかったので、マノーロを病院に連れていくのが遅れたかもしれない。五時間の車での移動と新しい家もすごいストレスになったはず。やっと家に慣れて故郷の空気を楽しんでいるかのように思えた頃、急に動きが鈍くなった。
そんな日が五日続いた後、夜中に発作を起こした。その夜、そのまま動物の救急病院に入院。危篤状態のまま、点滴生活が三日続いた後、死んでしまった。出来るだけの事はしたので淋しかったけれど仕方ないと思った。故郷のグラナダに戻るのを待っていたかのように逝ってしまった。シエラ・ネバダの山の大きな木の下に埋めに行った。その木の栄養になって葉や実になるように。
*マノーロの本当の気持ち
その後、マノーロを知る数人の知人に死去を知らせるといろいろな言葉が返ってきて考えさせられた。
“貴女が幸せになるのを見て安心して逝ったんだね”
私に対しても慰めになる優しい言葉だ。
“弱い猫だったから貴女に飼われて生き延びたわね”
確かに獣医もよく七年頑張ったと言ってはくれた。
ルミさんとの仲の良さを知っている友人はこう言う。
“病気もそうだけど、ルミさんを失ったのが一番精神的にマノーロが弱った原因だわね”
全部、一理あると思う。
そして私は思う。
私の旦那になる男はマノーロとルミを可愛がってはいた。でも、最初から彼らといる訳ではないので愛情が違うのだ。言ってみれば私の連れ子と住んでいるような状態だった。
猫達はどう思ったんだろう。最後にグラナダに帰って来たのも多分わかっていたのではないかと思う。動物ってそういうところ敏感だと思うから。でも、マノーロはなんせ“とろい”からな。わかっていたのかな〜。いまさらながら、猫はしゃべらない。猫の気持ちはわからない。もどかしいけど、だからカワイイ、愛しいのかな。
小さい頃好きだった本、ドリトル先生の話を思い出した。作者も動物の気持ちがわからなくてもどかしい思いをしたのではないかな。それで、動物の言葉がわかる先生を登場させたのかな。
ルミは、きっと強いから、マドリードで番長猫になってるはず。
シエラ・ネバダはもう雪が降りました。マノーロさんはもう雪の下です。
皆さん、ヨーロッパ最南端のスキー天国へ是非いらしてくださいね!
Sara Ayako Ishikawa
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