ちょっと前のわたしたち

【No.149】9月1日 Taka * 【No150】9月8日 Meche

No.150
9月8日 Meche(京都)

 沢山のことが一気にうわ〜っと押し寄せてきて、なんだかヘンな心持。 子供の頃、大波を頭からかぶってしまったときの気持ちに似てる。 ずぶ濡れで気持ちが悪いのに、なぜかワクワクしてしまうそんな不思議な感じ。

 まず最初にやってきたのは、激痛。

 夜中に突然目が覚めた。 うんうん唸るほど激しい痛みの原因は虫歯。治療でかぶせてもらった銀が外れていたのをずっと放って置いたら、こっそりひっそり膿んでいた。 一睡も出来ないまま朝が来るのを待って歯医者さんに飛び込んだけど、麻酔も効かないほどひどかった。 「服よりも化粧よりも、まずは歯をきれいにしなくちゃね。 これを機会に全部ちゃんと治そうね」という先生の言葉に、私は涙でぐちゃぐちゃに滲んだアイラインで目の回りを真っ黒にしたまま、「うん」と素直にうなずいた。 子供のようだと先生は笑っていた。

 その後続々とやってきたのは、久しぶりに会う友人たちとの約束。

 前の仕事場の友人たちは、虫歯のお陰でソフトドリンクを飲みながら噛まなくていい豆腐を食べる私を見て、「天然記念物だから大切にしなきゃね」と笑いながら言った。 でももう痛みが治まってお酒が飲めるようになったので、大切な天然記念物は絶滅。残念でした。

 スペイン留学時代を一緒にすごした小田原の友人は、「久しぶりの京都だから、美味しいもの食べた〜い」と引き続き虫歯治療中の私に言った。 焼肉の丸呑みはちょっと辛かったけど、彼女と一緒にいると何処にいてもスペインにいるみたいで楽しかった。

 日本に一時帰国している友人夫婦は相変わらずで、私をほっとさせてくれたし、大学時代の友人は、「最近心の底から笑ってないんよね」と切なくなるようなことを言って虫歯以上に私を心配させた。

 そんなこんなの私のもとへ次に押し寄せて来たのは、お仕事。

 ラジオのDJをしてる私にとってライブに行くのはある意味お仕事だけど、素敵なライブに出会えると私は自分がDJという仕事に就けた幸運を再確認する。

 流しのようなライブを見せてくれるアーティスト黄金井 脩くんは、歌も人柄もそしてお顔もいい。 お笑い芸人のようなMCしちゃうのに、その彼が創るスペイン語の歌はとても美しくスパニッシュギターの音と共に人の心を打つ。

 キューバのアーティストManolito y su Trabucoのライブは仕事じゃなかったら行かなかったかもしれない。 それほどその日の私は弱っていた 。だけどキューバのパワーは凄い! リズムに酔いしれてるうちにすっかり元気になった。

 DJとしての転換期もやって来た。 “スペイン語がしゃべれる”だけではもうこれ以上前に進めない。 より多くのものをより良い形で提供できるように、自分自身の殻を破らなければいけない。 今までの自分を変えるのは正直とっても不安だけど、道は前にしかないから頑張る。

 今年の夏はヘンな夏だった。 いつまでたっても暑くならなかったのに、秋の入り口に立った今頃になって暑い日が続く 。いつもなら家にこもってだらだら過ごす私なのに、毎日外出した。 楽しいことが大好きで頑張るのが人一倍苦手な私なのに、頑張ろうと決心した。 とってもヘンだし心持もやっぱりヘンだけど、きっと通り過ぎれば私の人生になくてはならなかった季節になる。 忘れられない夏になる。

 

No.149
9月1日 Taka(東京)

  もう夏の終わり。でも、今年は夏が来たような気がしなかった。夏らしいことを何もしなかった。海にも行かなかった。寒くて行く気にもなれなければ、まあ、そんな時間もなかった。実家の鹿児島にも帰れなかった。せいぜい、仕事の合間にスイカを食べながら甲子園の高校野球をテレビ観戦したことぐらいだろうか。きっと、十年後の私は、今年の夏のことを何も思い出せないだろう。それぐらい記憶に残らないつまらない夏だった。

 ところで最近、「あの人、ちょっと変わってる」という話が面白い。どれどれ、どんな風に変わっているのかな? と思う。もともと、私は、他人がどう変わっていようが変わってなかろうが全く、気にならない。それに、その基準もわからない。人のことはどうでもいいと思っている、わけではないが、干渉するのも中傷するのも好きではない。「Cada uno tiene su vida」だったか? まぁ、人それぞれということをいつも大事に思っている。

 とはいえ、変わってる、の矛先が自分に向かっているときにはビックリする。いままで何度も何十回も、それが自分のことを指す言葉だったことに気がつかなかったわけではないが……。先日、友人に会ったときのこと。「私、場所によっては変わった人って思われてるみたい」と話してみたら、友人は驚いた後で大笑いした。「Takaさん、笑わせないでよ。ホンットに変わってるんだから、そろそろ自分のこと知っといた方がいいよ」。

 いやあ、驚いた驚いた。誰に言われても、いままで自覚したことなど一度もない。そう。“私は変わった人ではない”ずっとそう思ってきたし、今もそう。しかし、仕事仲間もプライベートの仲間も一様に、そう言う。私は答える。「はーはっは。そういう一面、つまり、私の、ちょっと変わっている部分のことを見てみんなそう言うんでしょ?」。反応は、鈍い。あれ? 仲間達は、こんなとき一様に困った顔をしてしまう。

 「じゃあ、どこが変わってるのか、教えて!」という私の素朴な質問にも皆、困る。しかし、ポツポツと誰かが答え始める。そして、「そうそう!」と皆が頷く。その一例の中には、「わが道を行く」「何があっても動じない」「嫌いなものがなさそう」「いつも怒ってる」「いつも笑ってる」「毎日が楽しそう」「スペイン好き」「変な夢を見る」……。

 面白い。夢の話については、私は、一種の病気だと思っている。仕事に追われているときや疲れがたまっているとき、ときどき発症する。夢の中で、仕事をしていると『その仕事は1週間延びたから、明日は休んでいいよ』『メールにも書いたけど万事OKだからしばらく休みナよ』と仕事仲間から言われる。そして、本当に私は休んでしまうのだ。朝起きて、夜までそれが夢のこととは気がつかない。病気だ。しかし、こんなことまで、変わっているの要因の一つに挙げられているのも驚きであるが、まあ、”スペイン好き”が変わってるの要因の一つに入れられるのは、もっと不思議。

 「どうしてイタリアやフランスじゃなくてスペインなの?」
 私はまだ他の国のことさえよく知らない。だから、興味の延長線上であることと、あと、好きなものに理由付けができないことしか伝えられない。好きな度合いはいろいろあっても、それで、変わっているか変わっていないか、そこに判断基準が存在することも、すごく面白い。でも、仲間達は、この秋、こぞって初めてのスペインに旅立つ。

 しかし、私には、どう考えてみても“変わっていない人”についての方が、どんなんだかわからない。少なからず私が今まで知っていて、そして大事に思っている人たちは、皆、変わっている。変わっている魅力的な人が多い。だから私は思うんだと思う。
 私って、なんて平凡で変わってないんだろう! と。

 

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