ちょっと前のわたしたち

【No.54】10月1日(Norie) * 【No.55】10月8日(かおる)
【No.56】10月16日(Taka) * 【No.57】10月23日(Sara)
【No.58】10月30日(むく)

No.58
10月30日 むく(マドリード)

 子供を見ていると本当に表情が豊かであると思う。にこっとしている表情はまるで天使のようであり、またぐずっている時の表情はまるで鬼のような表情である。

 この数ヶ月で自分の人生が大きく変わった。というのもM嬢と知り合い結婚することを決め、彼女と彼女の子供のマルティンと3人で暮らし始めたのである。突然一歳過ぎの子供の父親代わりとなり、経験する事が初めての事ばかりで戸惑っている。

 マルティンは現在一歳と六ヶ月、自己主張の激しい子である。何かを伝えたいと声を出しているがまだ完全な言葉になっていないので、自分の言いたいことが伝わっていないと怒るのである。その点、母親の対処の仕方は感心するばかりである。適当にあやして返事を返し、子供はそれで納得しているようなのである。

 この間はM嬢が仕事で夜不在となり、ベビーシッターもおらず自分一人で面倒をみなければならなくなってしまった。おむつを替えるのも初めて、寝かしつけるのも初めて、という不安だらけの夜であった。

 しかしやってみるものではある。風呂好きだし、以前から風呂に入れるのは自分が引き受けていたのでこれは問題なし。ご飯を食べさせるのもまぁ問題はない。おむつを替えてパジャマに着替えさせるのは何とか済ませた。寝る前によく泣いているので寝かしつけるのが一番心配だったが、ミルクを与えて寝室に連れて行くとなんとすんなり寝てくれたではないか。やれやれ一安心である。

 深夜に救急病院に連れて行ったり、夜泣きで何度も起こされて睡眠不足が続いているこの頃である。初めて子供を持った親の苦労が少しは分かるような気がする。ただ何といっても嬉しいのが仕事から帰った時に出迎えてくれる、その表情である。欲目かもしれないがいかにも嬉しそうな表情をして出迎えてくれる。その表情だけで家庭を持った喜びをつくづくと感じさせてくれるのである。

 

No.57
10月23日 Sara(マドリード)

 “日本とスペインの間には”

 今月は、日本のTV局との仕事があった。日本から人気のタレントさん3名のアンダルシアのヘレス、カディスを中心とした旅行紀の撮影の為の、準備、そして撮影期間は通訳をする仕事でした。

 実際撮影期間に入ってからは、変更しなくてはならないことが、沢山でてきた。例えば。闘牛体験のシーンで、当初の予定ではヘレス市内の闘牛場に牛を運ぶ予定だったのだが、2〜3日前に闘牛学校の校長先生から電話が入り、牛を運ぶのには、人手もいるし大変なので、牛のいるところまで来て撮影してほしい、そこには、市内にあるのと同じ闘牛場もある。こんな時、私は、そうか、そうだろうな、と思ってしまう。そして日本側のスタッフに報告すると…。大目玉を食らうのです。短期間での撮影での、変更は禁物。

 このような、変更や、行ってみたら、条件が違った。など、今回の仕事は、あまりついていなかった。ついていなかった。だけでは済まない。私の仕事の責任を考えると、やはりどんな小さな変更にせよ、 ほんとうはあってはいけないのです。遠い日本からやってきて、一つの番組を作るという、結果を求めるプロフェッショナルな仕事に対して、私も、準備期間の段階に、プロフェッショナルとして、全てのことに変更が無いように仕上げておかなくてはいけなかったのです。

 私は、今回、日本とスペインの間に入る役であり、日本側でも、スペイン側であってもいけない。その溝をなるべく埋めるのが仕事なのだ。それにしても、変更が多く、周りが見えなくなっている日本側の スタッフに、それを伝える間は無かった。皆が、結果を求めるだけで、必死になってしまった。当然と言えば当然。変更があったのも私の責任なので、それを最小の範囲で押さえる様にする事だけで、精一杯だった。非常に力不足を感じた。

 スペインと日本の大きな大きな違いを感じた。生活習慣、文化の違い。書いてしまえば簡単だけれど、思った以上に違いは大きい。特に、これが、相手の文化に触れる場合はことさらだ。通訳、コーディネートという仕事がとても難しいと、更に思った。一つの結果を求めてくる人々に対して、先ずは、準備を100%、120%で迎えなくてはいけない。その上で、日本とスペインの間の溝埋めに入れるというものだ。通訳だって、そのまま訳していたんじゃ、喧嘩になることだってある。意訳が必要な時もあるのだ。

 嬉しかったシーンがある。一人のタレントさんが実際に闘牛にチャレンジしたことだ。危険なので、これは、やらなくても良い事になっていた。このタレントさんは、闘牛学校の生徒さんや先生の姿に打たれる物があったらしい。彼自身も音楽の道を歩む方です。これをやらないと、自分の一生の中で、何か重要なものを掴む機会を失う。と、コメントなさっていました。堂々と闘牛場に出て行き、何度か、習った技で牛をかわした。闘牛学校の先生方も彼の挑戦した意味を良く解っていらした。小さい頃から、闘牛だけを目標に生きている人々の土俵である、闘牛場に、違う国から来たミュージシャンに正闘牛士の衣装をまとって立つ事を、快く許してくれた。闘牛は精神でやるものだ。素晴らしい文化交流が出来た。と、嬉しいコメントを頂いた。

 仕事が終わって5日間たっても、通訳をしている夢で目が覚める。次回の仕事は、きっともっと上手く出来る。

Sara Ayako Ishikawa

 

No.56
10月16日 Taka(日本)

 知人から子犬の里親を探してくれないかという相談があった。訳を聞くと、近所の工場に妊娠中の柴犬が捨てられていたのだとか。たまたまその工場のオーナーが心優しい人だったために妊娠していた母犬は工場敷地内の小屋を住処にと提供してもらい無事に出産を終えた。そして産まれた子犬は4匹。うち雌が3匹で雄が1匹。この雄犬の里親を探しているのだ。雌の3匹についてはすでに里親も決まりもらわれていった。現在、生後3ヶ月にもなる残りの1匹がまだ行き先が決まっていない。ちなみに母犬はその工場で飼われることになった。

 しかし、けしからんゾ! と心から腹立たしく思う。人間の勝手で飼われて勝手で捨てられていく動物たち。日本ではペットブームという言葉がごく自然にあるけれど、数年前にあれほど人気のあったハスキー犬たちはいまごろどこにいるのだろう? それを思うと首を傾げてしまう。だって、散歩をしている彼らの姿をまるっきり見なくなってはや幾年である。

 9月に九州の実家に戻ったときには猫が家に迷い込んできた。迷い込んできた先がたまたまウチだったけれど、その猫も捨てられていたものだった。犬も猫も野外に捨てられ野良となる生活を強いられればアッというまに風邪をひく。ウィルス性の鼻炎にもなる。我が実家で飼い始めた猫のナキちゃんも例外ではなかった。ウィルス性鼻炎の持ち主なのだ。1日に1回は2センチの鼻水を垂れる。飼い始めてからもうすぐ2ヶ月になるが、ナキが鳴き声を出したことはほとんどない。鼻をやられているために声も出ないのだ。おかげで3日に一度、注射を打ちにと病院通い。

 「金食いナキ」「とんだ拾いものをしてくれたもんだ」。保険のきかない動物の病院通いに母親は愚痴もこぼす。こぼすけれど、止めることはしない。注射を打った後のナキは鼻も通るようでヒョ〜と猫らしくない鳴き声を上げる。そんなとき嬉しそうに電話をかけてくる母の声は、言わずとナキを自分の家族として受け入れていることがわかる。その度に私もナキに会いたくなる。はやく完治して元気に鳴いて欲しい。そして、柴犬の里親が早く見つかって欲しい。また、これ以上、猫や犬たちが人間の勝手で捨てられないように…と切に願っている今日この頃です。

 

No.55
10月8日 かおる(マドリード)

 俄かに最近、TV、その他でユーロのお知らせが目に付く。 通貨統合ってことで、ユーロがやってくる日が秒読みになってきたのだ。

 来年の1月から、ペセタはお別れ、代わりにヨーロッパ統一の通貨、ユーロが登場するのだ。
 ・・・ってことはみんな周知のこと。1ユーロが166.386ペセタってことも、大方の人は知っている。計算を簡単にするために、「つまるところ、1000ペセタは6ユーロだな」ってこともTVなんかのキャンペーンで広まりつつある。私だって、仕事の価格表をユーロ表記に直したり...と慣れるように努めてはいる。 でも、つまるところ、やっぱりまだまだ、ペセタになっちゃうのだ。 ユーロ。ドルと対抗する通貨っていうけれど、今これを書いているワードソフトでは ユーロの記号さえ出せない。まだまだ、マイナー。

 来年の1月1日の流通からわずか2ヶ月間で市場に流通している通貨の入れ替えを完了させるため、造幣局ではものすごい量のユーロが紙幣、硬貨とも蓄えられていると聞いている。
 9月末から銀行の口座の残高証明なんかも一律ユーロ換算表記となった。
 一般市民にも、とにかくなじませるための策なんだろうな。こういう私も銀行の残高証明をチェックして、ユーロ表記をいちいち電卓に乗せて計算し直しているうちの1人。
 引き落としが7500ペセタと言われると、だいたい「あれだな」と予測がつくが、45ユーロ、といわれると「それ、ペセタでなんぼ?」の世界だ。
 残念ながら私には関係のない話だが、いままでこっそりへそくっていた、いわゆるタンス預金が無効になってしまう、ってことで、高級車や不動産の買いつけ大ブームなんだそうだ。これで吐き出される闇資金は1兆ペセタ、なんてことも巷では囁かれて いる。ふーん、実はみんなお金、持ってたんだ。ウラヤマシイ。
 みみっちい私はというと、スペイン人さえもあまりノスタルジーを持たない、ペセタの硬貨をこれを最後、と最近はキープしている。しかも、5ペセタ、25ペセタ硬貨には地方を代表するモチーフがついていて、その絵柄が毎年変って楽しかった。絵柄の面白い50ペセタも集めたかったが、これは最後の幕切れまでにいくつ集まるかは怪しいところ。

 それはさておき、来年の1月こんなふうに準備してても、大混乱するんだろうな。だって、計算苦手な人が多いんだもの、スペイン。
 先日、私の元にきた問い合わせ。「老人用に、大きな字で書いてあるユーロとペセタの換算表が欲しいんだ。手に入るかい?」小さな村のおじいちゃんやおばあちゃんも安全に確実に通貨入れ替えが行われますように、と祈ってしまう。

 

No.54
10月1日 Norie(バリャドリード)

 犬を飼おうと思っている。前々から犬は飼いたかったのだけど、「帰国するとき、どうする?」というのが一番の理由で、これまでは二の足を踏んでいた。ところが、先日会った友だちが連れていた 非常にかわいくて賢いラブラドールにホレ込んでしまったのだ。(犬種に関わらず、しつけがしっかりしているから賢いのだが。)

 それと、犬には迷惑な話だろうけど、空港で荷物扱いにされた犬を見かけたり、旅行に行くときはペットホテルに預けるよ、という話を聞いたりしているうちに、飼えそうな気がしてきた。電話帳で調べたら、隣村にはペットホテルも数軒あることが分った。わたしは自営業だし、村に住んでいるから、犬を飼うには好都合だと思う。すぐ近くにはドゥエロ河も流れ、散歩コースにピッタリ。

 「犬を飼おう!」と決めてからは、犬の専門誌を眺めたり、犬関係のサイトを見てまわったり。挙句の果てには、セゴビアまで仔犬を見に行ったり。

 もちろんスペインでもペットショップはたくさんあって、犬やネコ、小鳥、ハムスター、カメなど何でも売っている。ブリーダーから直接購入しようと思ったのは、3ヶ月くらいまでは母親や兄弟とのびのびと育った仔犬の方が健康面でも安心できるから。血統書に拘ったわけではない。

 と、エラそうなことを言ってみたけど、セゴビアのころころした仔犬を目の当たりにして、「これ欲しいーーー」と予約してしまっただけの話。

 「ラブラドール飼うよ!」と前述の友だちにメールしたら、返事の最後で「では、ボブによろしく。」と勝手に名前がつけられてしまった。飼う予定なのはメスなので、スペイン語風に女性名詞化すると「ボバ」。日本語に直すと「おばかちゃん」。

 それじゃ〜さすがにマズいから、現在名前を考え中。夫の希望は「ラブ子」。よりにもよって「ラブ子」。

 

 

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