ちょっと前のわたしたち

【No.14】12月4日(TOSHIO) * 【No.15】12月11日(カナ) * 【No.16】12月18日(Norie)

No.16
12月18日 Norie (バリャドリード)

 週末、バルセロナで開かれた杖道、剣道、居合道の大会に行ってき た。25回目というこの大会には、100人以上の選手が出場し、フラン スや日本からもその道の大家が出席していた。マーシャルアーツは、 スペインでも非常にさかんだ。オリンピックでも柔道でメダルをと ったし、町にも空手教室や柔道教室をよく見かける。小学校の授業 でもマーシャルアーツがあるのだそうだ。

 ただ、剣道は道具にお金がかかるため、なかなか欧州では広がらな い、という話だったが、○○高校××と書かれた、いかにも中古の 道具をつけているのを見て、なるほど、そういう手もあるんだな、 と感心。出場選手の中に日本人を見かけたので、いろいろ話を聞い たところ、スペインの剣道のレベルは日本に比べるとまだまだ、フ ランスにも少し劣るけれど、わりと良い線はいっているらしい。た だ練習中に、「先生、そうじゃないんじゃな〜い!?」と文句を言っ たり、彼曰く、「日本なら破門になりそうな出来事」が、毎日起こ るのだそうだ。

 そういえば、わたしたちを招待してくれた空手の師範も、「日本の マーシャルアーツの世界では、先輩後輩関係が厳しくて、後輩は先 輩の言うなりに動かなくちゃいけないけれど、スペインではなかな かそれが理解されない。だから、わたしの人生は、ず〜っと後輩人 生なんだよ。ココロは良いのだけど、スペイン人は師範の後をまっ すぐついていく、ということができない。すぐ寄り道するんだ。」 と苦笑いしていた。

 大会3日めは昇段試験。連休最後の日曜日、朝9時開始。ちょっと遅 れて、わたしたちが到着すると、路上駐車の間で、木刀を振り回し て、居合の型を練習している人たち。真剣に練習しているわりには、 試験場が禁煙なので、ドア付近にタバコの吸殻が数え切れないくら い落ちている。前の日に話をした青年に声をかけたら、「ボクはこ ういう場には来なくちゃいけない、と思うんですけどね、他のメン バーは眠いって・・・」どうやら、試験を受けない人は、ホテルで ゆっくり寝ているらしい。

 何にせよあまり無理をしないのが、スペインらしいところかもしれ ない。

 

No.15
12月11日 カナ (マドリード)

 この数週間、すこぶる天気が悪い。シトシト、とか、ドンガラガッシャ、とか、日によって音は違うんだけど、とにもかくにも雨ばかり。夜になって降り出すこともあれば、朝から強風とともに吹き付けてくることもある。「傘なんか、持ってないよぅ。要らないもん。だってここ、マドリードだよ?」と強がっていた友人のバッグに、折り畳み傘をしのばせるほどの雨模様なのだ。
 昼過ぎから突然雨を降らせ出した空を恨めし気に見上げる私の横を、生粋のマドリレーニョ(気取ってて皮肉屋で毛が濃くて、ネコみたいな男。毛は余計だけど)が通り過ぎる。「ハッ、我らが『太陽の国』よ!」

 でも、どんなに雨が降ろうと、たまさか槍が降ろうと、よしんばマドリレーニョのエドゥアルドのもみ上げがテクノ風にカットされたとて、時は刻々と進むのであり。そう、もうすぐ、クリスマスなのだ! ソル近辺の通りや、プラド散策路、カステジャーナ散策路などはきらびやかにライトアップされていて、まるでディズニーランドに来たような雰囲気。
 スペイン最大(にして唯一)の大手デパート、エル・コルテ・イングレスのデコレーションも、これまた夢の世界。とくに圧巻は、ソルのコルテの、西側の壁面。落っこちそうなほど巨大なサンタが、「悪い子、いねがー」じゃなかった「フォーッホッホ、良い子のみんなにはプレゼントだよーん」と微笑んでいるのだ。週末ともなると、これを見るためにヤレ押すなソレ押すなの大騒ぎ。

 ちなみに、携帯電話会社 amena が行った去年の猛宣伝でお馴染みの、緑色の服を着たサンタさん。どうやら今年は、patinete に乗ってくるらしい。ふたつセットの携帯電話を買うと、もれなくついてくるってわけ。この patinete、日本での名前は「キックボード」だったかな? まさか、Rodilla(サンドイッチのチェーン店)で当てたやつじゃなかろうな。

 もうひとつ、去年からお馴染みの年末商戦といえば、マクドナルドのモノポリー。去年は車にバイクにモルジブ旅行に、そんでもって1000万ペセタが当たる! っていうからむさぼり食ったけど、ただ切なく太っただけだった。その教訓を生かせない私は、今年も、シールを4枚欲しいがために「たった75ペセタでドリンクもポテトもLサイズにするぜ Super メニュー」を注文してしまうのだ。私の、バカ。ひとりでマックに行くと歯止めがきかないから語学学校の友人を誘うと、「ごめーん、ラマダン中なんだ」とのこと。こりゃ失敬。私の、バカ。

 そんな私、クリスマス・イブはバレンシアへ小旅行。でも、24日の夜に、どのレストランが開いてるっていうんだろう。私の、バカバカ。仕方ないから、マクドナルドでモノポリーのシールでも集めるか。
 皆さまにおかれましては、良いクリスマスを!

 

No.14
12月4日 TOSHIO (ドイツ)

  10月の一時帰国休暇をきっかけに、最近、四人の素晴らしい女性たちに次々と めぐりあうことができた。久し振りに出会った、心をときめかせてくれる女性 たち。と言っても、書物の上の話である。しかし、四人とも実在の女性たちではあ る。

 先ずは、弁護士大平光代さん。彼女自身、中学時代に自殺未遂に追い こまれるまでいじめ抜かれたことがきっかけで非行の道に走り、16歳からは極道 の妻だったという映画さながらのユニークな経歴を背負っている。やがて暴力団 組長とも離婚し、クラブのホステスをしながらその日暮の生活を続けていた大平 さんは、偶然出会った父の友人に励まされるまま、資格獲得のため懸命に勉強を始 め、血の滲むような努力の末ついに司法試験に合格する。大平さんは今、弁護士とし て非行少年たちの更正のために尽力している。人間、諦めてはいけない、とか、死ん だつもり で頑張ってみろ、とは良く言われることだが、その通りに、いやそれ以 上に頑張り抜いている大平さんの壮絶な半生には、ただただ頭が下がるのみで ある。因みに、私の友人の中にも司法試験を受け弁護士になるべく会社を辞めて いった者が少なくないが、大平さんのように一発で合格した奴は一人もいない。

  二人目は、小出監督が描いた高橋尚子さん。シドニーオリンピック女子マラソ ンの金メダリストとして、今や日本中知らない人のいない高橋選手の素顔が、至 近距離に位置する小出監督の眼を通して描かれている。監督のコメントに、テレ ビの前に釘付けになって観たシドニーの彼女の走る姿が重なる。あれほど呆気無 く勝ち取った彼女の金メダルの背後には、やはり常人の想像を絶する超人的な練 習が隠されていたのだ。男は黙って脱帽である。

  三人目は、自身の不倫、妊娠、出産を赤裸々に描いた作家の柳美里さん。不倫 相手の不実を詰りながらも這い上がる事の出来ない泥沼の中にずるずると落ちて いくどうしようもない「女」の弱さと、体内に宿った「命」に何処までも責任を 持って関わっていこうとする凄まじいまでの「母」の強さの両極端が、柳さん自 身の中に棲んでいる。この両極端こそ、男にとって女が永遠に謎であり、男が女 を愛しいと思い、男が女に惹かれて止まない所以であろう。

  四人目は、司馬遼太郎氏の「功名が辻」の主人公、山内一豊の妻・千代であ る。律儀なだけが取柄の凡庸の夫・山内一豊が時流に乗り遅れることなく、織田、豊 臣、徳川の三家に仕えながら最後には土佐25万石を治める一国一城の主にま で上り詰めることができたのは、確かに彼の妻千代の功績に拠る所大である。内 助の功とは、まさに千代の為にある言葉であろう。子宝に恵まれずとも千代の みを妻とし一人の側室も置くことなく生涯を終えた一豊の決意とその生き様も、 これまた立派ではある。見上げたものだ。しかし、一豊がそのような生き様を貫 くことができたのも、やはり他ならぬ千代故であったに違いない。

  素晴らしい四人の女性たちに巡り合い、以前にも増して女性に対する尊敬の念が ますます深まる昨今である。

 

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