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10月の一時帰国休暇をきっかけに、最近、四人の素晴らしい女性たちに次々と
めぐりあうことができた。久し振りに出会った、心をときめかせてくれる女性
たち。と言っても、書物の上の話である。しかし、四人とも実在の女性たちではあ
る。
先ずは、弁護士大平光代さん。彼女自身、中学時代に自殺未遂に追い
こまれるまでいじめ抜かれたことがきっかけで非行の道に走り、16歳からは極道
の妻だったという映画さながらのユニークな経歴を背負っている。やがて暴力団
組長とも離婚し、クラブのホステスをしながらその日暮の生活を続けていた大平
さんは、偶然出会った父の友人に励まされるまま、資格獲得のため懸命に勉強を始
め、血の滲むような努力の末ついに司法試験に合格する。大平さんは今、弁護士とし
て非行少年たちの更正のために尽力している。人間、諦めてはいけない、とか、死ん
だつもり で頑張ってみろ、とは良く言われることだが、その通りに、いやそれ以
上に頑張り抜いている大平さんの壮絶な半生には、ただただ頭が下がるのみで
ある。因みに、私の友人の中にも司法試験を受け弁護士になるべく会社を辞めて
いった者が少なくないが、大平さんのように一発で合格した奴は一人もいない。
二人目は、小出監督が描いた高橋尚子さん。シドニーオリンピック女子マラソ
ンの金メダリストとして、今や日本中知らない人のいない高橋選手の素顔が、至
近距離に位置する小出監督の眼を通して描かれている。監督のコメントに、テレ
ビの前に釘付けになって観たシドニーの彼女の走る姿が重なる。あれほど呆気無
く勝ち取った彼女の金メダルの背後には、やはり常人の想像を絶する超人的な練
習が隠されていたのだ。男は黙って脱帽である。
三人目は、自身の不倫、妊娠、出産を赤裸々に描いた作家の柳美里さん。不倫
相手の不実を詰りながらも這い上がる事の出来ない泥沼の中にずるずると落ちて
いくどうしようもない「女」の弱さと、体内に宿った「命」に何処までも責任を
持って関わっていこうとする凄まじいまでの「母」の強さの両極端が、柳さん自
身の中に棲んでいる。この両極端こそ、男にとって女が永遠に謎であり、男が女
を愛しいと思い、男が女に惹かれて止まない所以であろう。
四人目は、司馬遼太郎氏の「功名が辻」の主人公、山内一豊の妻・千代であ
る。律儀なだけが取柄の凡庸の夫・山内一豊が時流に乗り遅れることなく、織田、豊
臣、徳川の三家に仕えながら最後には土佐25万石を治める一国一城の主にま
で上り詰めることができたのは、確かに彼の妻千代の功績に拠る所大である。内
助の功とは、まさに千代の為にある言葉であろう。子宝に恵まれずとも千代の
みを妻とし一人の側室も置くことなく生涯を終えた一豊の決意とその生き様も、
これまた立派ではある。見上げたものだ。しかし、一豊がそのような生き様を貫
くことができたのも、やはり他ならぬ千代故であったに違いない。
素晴らしい四人の女性たちに巡り合い、以前にも増して女性に対する尊敬の念が
ますます深まる昨今である。
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