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CHATAのスペイン一周つまみ食い
● パンプロナ ●

 ナバラ地方は、エブロ川流域の肥沃な土地から採れる上質な農作物はもちろん、料理としての完成度も世界的に認められている。一説によればフランスのナポレオン軍がスペインに遠征した際に受けた影響ということだが、確かにレストランでの料理の盛り付け方なども洗練されていてフランス料理を思わせることがある。特に日本人の感覚では想像し難い食材の組み合わせが面白い。

 その一つは当然トルチャ・ア・ラ・ナバラ(虹鱒のナバラ風)。淡泊な味の川魚を生ハムの塩味で引き締める。「魚は魚、生ハムは生ハムで別々に食べたい!」という注文前の内なる思いは見事に吹っ飛んだ。川岸で偶然的に生まれた料理とはいえ、思わず(ほぉー)と感心せざるを得ない。ともかく新鮮な紅鱒。赤ワインに1時間半ほど浸してそのままをじっくり煮込みソースで食べるという料理もあり、心ゆくまで鱒料理を堪能出来そうだ。秋先の狩猟の時期になると野鳥料理にもメニューは広がる。カタルーニャ料理とも言われているペルディセス・コン・チョコラテ(山うずらのチョコレートソース仕上げ)も実はこの地方のオハコらしい。料理にチョコレート。全く何をしてくれるやら。

 毎年7月に行われる牛追い祭りで有名なパンプロナだが、私を含めて牛と走るより食い気に走る者も多い。石畳の脇に立ち並ぶ奥行きの深いバールが、夜更けと共にメラメラと魅力的に輝き出す。食前酒にパチャランを流し込む。アホ・アリエロ(鱈の身のトマト煮)、レブエルト・デ・セタス(茸類の卵あえ)、羊肉のローストなんぞを目の前にすれば、バールの一角に腰を据えたくなるのはもっともな話。おまけに炭火で香りよく焼かれたチストラのオープンサンドがカウンターの上から誘惑している。

  手始めにコチフリート・デ・コルデロ。そう、記憶力の良い読者の方は(これってトレド名物じゃなかったの!)とお怒りになるかもしれない。が、ここはスペイン。こんなことは日常茶飯事。例えば花の形の揚げ菓子、フロールはラ・マンチャ名物でありエストレマドゥラ名物でもある。おまけにサラマンカに行けば「ここのが本家本元よ!」といった具合。こうなったら発祥の地を調べるよりもどの民族が生み出したかを辿る方が良さそうだ。かくして、こちらのコチフリートとやらは、一口大に切りカラリと揚げた羊肉を野菜と共に煮込み、さらにレモン汁がさわやかさを添える。羊肉の香りがレモンの香りとミックスされなんとも良いカンジ。

 それだけでは済まない。南部リベラ地方のトゥデラ産の野菜をふんだんに使ったメネストラも食べてみたい。もう野菜嫌いなどとは言わせない。極めつけはアスパラガス。実は日本にいた頃は白いアスパラガスは缶詰の既に柔らかくなった状態しか知らず、独特の缶のにおいも好きではなかった。黒い土から出現した真っ白なアスパラガスを初めてかじった。シャッキリとして甘いじゃない!それになんて白い!それからである。私のアスパラガス好きが始まったのは。

 ロンカル産のチーズと軽くローストしたパンプロナ産チョリソのボカディージョを小脇に抱え、”牛追い”など何処吹く風の私であった。

トルチャ・ア・ラ・ナバラ
(↑)トルチャ・ア・ラ・ナバラ

*パチャラン
エンドリナという野生の西洋すももの実から造られる果実酒。果実は青黒くリキュールは朱色をしている。アルコール度は25%volとかなりきつい。

パチャラン
(↑)パチャラン

*アホ・アリエロ
同じ名前の料理が各地で見られるがナバラ地方が元祖と言われている。鱈がとても細かくほぐしてある。トマト、ジャガイモ、玉ねぎ、ピーマン等と共に煮込む。

*チストラ
ナバラ特産の腸詰め。豚肉赤身が主原料だが、トシノ(脂身)を50%混ぜたものは特にチストラ・ブランカという。前者の多くはフリート(多目の油で炒める)され小さく切り分けられたものがカスエラに入って登場する。

*ロンカル産チーズ
ナバラ西方ウエスカ県との県境近くのピレネー山麓の村で生産されるチーズ。ラチャと呼ばれる種の羊乳を原料とし、昔ながらの伝統的手法で造られる。1981年にスペインで一番初めにD.O.指定受けたチーズである。

*パンプロナ産チョリソ
パンプロネスとも呼ばれ、一見サラミソーセージにも似ているが、パプリカ、にんにくの味が効いていて薄く切ってボカディージョと相性が良い。

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 スペインの味に挑戦!今回のチャレンジレシピ
コチフリート

《 材料 》
羊肉 1キログラム、 オリーブオイル 1デシリットル、 玉ねぎ 200グラム、にんにく 5かけ程度、レモン汁 1個分、パプリカ・粒黒胡椒・パセリ・塩 適当
《 作り方 》
1. 羊肉を一口大に切り分け、塩をした後、カスエラに油をひいて揚げるように炒める。
2. 色が付きはじめたら、微塵切りにしたたまねぎ、にんにく、パプリカを加える。
3. モルテロですりつぶした粒胡椒と微塵切りのパセリをカスエラに加える。
4. レモン汁を廻しかけ全体に馴染ませて味を落ち着かせる。
5. 出来立ての熱い状態(出来ればカスエラのまま)で食卓へ。
※ オリーブオイルの代わりにラードを使うこともある。パプリカは皮をむいた赤ピーマンでも良い。羊肉は始めにじっくり揚げるのが成功の秘訣。塩は少し強い目のほうが美味しいかもしれない。ラ・マンチャ地方に見られるものは、ワインにマリネしておいた羊肉を使い、仕上げに卵でコクをつけたもの。同じ料理名でこれだけ違った料理が存在するのは興味深い。食べ比べてみる価値ありかもしれない。



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