● シウダー・レアル、アルバセテ ●
トレドから更に南下したシウダー・レアル周辺では、かのドン・キホーテの食卓に同席してみる。コシードはもとより、ドゥエロス・イ・ケブラントス、ミガス、ピスト・マンチェゴも試せるだろう。このドゥエロス・イ・ケブラントスとは何ぞや?というウンチクを語るとスぺースがあっという間になくなるのでここでは語らず、バルデペーニャス産の赤ワインを食事の友に豪快にやってみよう。ラ・マンチャ地方はスペインでのハウスワインの産出量第一位を誇り、特に産地を指定しなくても「ビノ・デ・ラ・カサ」と注文すれば財布も味も共に満足できるのが嬉しい。料理ができるまでの間、日本の芥子茄子にも似たアルマグロ特産の茄子漬けでも摘まむのも良い。バールのカウンターの片隅に何気なくひょっこり乗っているので探してやっていただきたい。
アルバセテからクエンカへ向かうルートでは、素朴なレストランに潜入しガスパチョ・マンチェゴ、カルデレタなんていうメニューがあれば迷わず試すが勝ち。今や知る人ぞ知る、ガスパチョ・マンチェゴだが、野ウサギ・野鳥をじっくり煮込みレバーでコクをつけ、最後にトルタというパンを手でつぶしながら加えるという、正に猟師の野外料理が基本である。真夏に「スッキリと冷たい料理を」なんて注文してしまうと期待を大幅に外すことになるが、ピリリとした黒胡椒の実に香辛料がアクセントになり実は何ともオツな味。何でも歴史的にはかなり古い料理であるにもかかわらず、この地方のレストランのコックに頑固者が多く、「牛肉は入れるな!」「トルタは普通のパンじゃだめだ!」などと言っているうちにすっかりガスパチョ・アンダルスにガスパチョの十八番を持っていかれてしまったらしい。うまくすればパエジャ・バレンシアナ同様スペインの代表料理となっていたかもしれないのだが。
マンテカド・マンチェゴ、トルタス・デ・アルカサルなどの素朴なお菓子の傍らに、ミゲリートというお菓子がある。このお菓子の発祥の地はアルバセテ県内のラ・ロダ。小さな町なので一体何人の日本人がここを通過したかは知らないがミゲリートのためだけにこの地を訪れても良いぐらい美味しい。4x5センチぐらいのパイ生地にパステレラ・クリームがたっぷり入って上面には丁寧に粉砂糖がかけられている。これが不思議に甘くない。バターではなくラードを使ったパイ生地だからだろう。ちょっとぐらい食べ過ぎてもどうってことない錯覚に襲われ、あとで体重計を見てゾッとすることになる。
クエンカではアタスカブラやモルテルエロを酒の肴に一杯やって行こう。そう言えば名物のサラホスを忘れるところだった。まったくまだまだ美味しいものがあって食べつくせない。必ず再来することを誓い、後ろ髪を引かれる思いでアラゴン地方へ出発しよう。
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