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もう一つ、街角で気になるのが美味しそうなアーモンドケーキ、タルタ・デ・サンティアゴ。表面に粉砂糖でサンティアゴの十字架の模様があるのですぐに分かる。いつものとおり甘ったるいケーキを想像するのだが、中身はあっさりしていて、パクリと食べるとアーモンドの匂いがプーンと漂う。
聞き込み調査の結果、一つの小さなバールに目つける。間口が狭く、気を付けて見ていないとつい見過ごしてしまいそうである。内装も質素なもので、席数も20人も入ればもう窮屈な程。店主兼カマレロが一人、黙々と店内を切り盛りしている。壁には日本のビールのポスターの様な宣伝用ポスターがドンと数枚貼り付けてあるのだが、その中にあるのがシガラ(手長えび)とピミエント・パドロン(獅子唐辛し)のポスターだ。
シガラはカニのはさみを持ったエビといったところで、バレンシアに住む今でこそ見慣れたものだが、実はこの時初めて見たのだった。スープに使うと良いダシが出るのだけど食べるとなると身が少なくてついガシガシと殻ごと噛んでしまうのでシガラというよりシガム(歯牙む)といった方かいい。もっとも高級なマリスケリア(魚介料理専門店)では全長20センチ以上もある立派なシガラを味わうことが出来る。ここまでくればまさかガシガシやるわけにはいかなくなる。プリプリとして甘みがありファンも多い。
実は本命は次のピミエントなのだ。サンティアゴ・デ・コンポステラから少し南西にあるパドロンという小さな町がその産地である。獅子唐辛しというと細長いものを想像するが、実際はもっと丸みがある。一人前で20個程もあるだろうか、ざっと塩焼きにされて出てくる。面白いのが中に1〜2個だけ、激辛が混じっているのだ。中国のおみくじ付きクッキーのごとく、摘まんでは食べ、また摘まんでは食べる。口で辛さを確かめながらも手は次のくじを引いている。そのうち必ず辛いやつに当たるのだけど、白ワイン、アルバリーニョでさっと流し込む。
ワインに関してはまだ未熟者なので、生意気な口をたたこうとも思わないが、アルバリーニョはリベイロと共にガリシア地方を代表するワインで、甘い香りとスッキリした味わいが印象的である。
酔いが廻りはじめたところで、お待ちかねのカルド・ガジェゴが運ばれる。土製の器に注がれたカルドを木のスプーンでそっとすくって啜るととても懐かしい味がする。大根にインゲン豆にじゃがいもを豚骨スープで煮込んであるのだが、日本の豚汁を思わせるものがある。ガリシアのおふくろの味といったところではないだろうか。ポテ・ガジェゴはコシード・マドリレーニョと同一線上にある料理で、スープを一皿目の料理、具を二皿目の料理とするのが本来の食べ方である。
ラコン・コン・グレロスは塩漬けの豚肉とグレロスというカブの葉を煮込んだ料理だが、カルド、ポテと共に、これらの料理に不可欠なじゃがいもの存在を忘れてはいけない。じゃかいもこそが、ガリシア料理の中で最も登場する野菜なのである。何故なら、スペインではここガリシア地方が最初の栽培地に選ばれたという歴史があり、現在でも良質なじゃがいもを産出するこの地方では、多くの料理にじゃがいもが取り入れられ、メルルサ・ア・ラ・ガジェガを始め、多くの”ア・ラ・ガジェガ”と名の付く料理やカルデイラダという魚料理も例外ではない。
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