● サンタンデール ●
ここカンタブリア地方では”山海の珍味”をたっぷり満喫。先ずはとれとれぴちぴちの新鮮な魚介類からスタート。焼いて美味し、煮て美味しは見ているだけでも美味し。伊勢エビやオマールエビが豪快に、されどもさり気なくガラスケースから見えるのがニクイ。バカラオ、メルルサはもちろん、貝類もイキがよく、運が好ければ路上で”焼きはまぐり”を売っているのに出くわしたりするのがなんとも懐かしい。香ばしい磯の香りが鼻先をくすぐり、日本のお祭りの時の出店がふっと思い浮かぶ。ピンと背の張った艶やかなサルディナやカスエラで料理されたアンチョアも見逃せない。カステジャノでカラマールと呼ばれるヤリイカはラバという呼び名に変身するが、カラリと揚げたリングフライは相変わらずバールには欠かせないものだ。山岳部では腸詰めや兎、子牛などをコトコト煮込んだ”ア・ラ・モンタニェサ”と名の付く料理も非常に多く、厳冬には欠かせない料理である。鶏肉をカスエラで煮込んだポジョ・カンプリアノなど心身共に温めてくれる食事の締めくくりにはポテスのオルホをぐいっと一気に飲み干すのだろうか。
この地方の料理の特徴としては豆類の豊富さも見逃せない。注目したいのが白いんげんと斑入りいんげんとガルバンソの使い分け。例えば、いんげん豆チームを豚肉やモルシージャと共に煮込むとエル・モンタニェス、ガルバンソを同じ材料で煮込むとエル・レバニエゴと別の料理になる。レバニエゴとはリエバナの派生語。つまりリエバナ谷周辺では主にガルバンソが入るということなのだ。ガルバンソはカルタゴ人によってイベリア半島に持ち込まれ、アンダルシアを中心に半島のほぼ全土に広まったもので歴史的にも古い。一方でいんげん豆のスペイン伝来は新大陸発見以降となる。つまり白いんげん豆はキリスト教国となってからの新食材なのである。宗教が食文化に反映しかつ両存した面白い一面といえる。おそらくリエバナ周辺に残ったイスラム文化の名残なのだろう。当時のイスラム軍の勢力の強さを思い知らせるものでもある。
新鮮な牛乳または羊乳を使ったクワハダは子供の頃に散歩の帰りに立ち寄った牛乳屋さんにも似た店でひっそりと売られている。好みで砂糖や蜂蜜をかけるのだがトロリとしてデザートに美味しい。店にはフレッシュ・チーズも並んでいる。べガ・デ・パス(パスの渓谷)周辺に住んでいた移住民族をパシエゴスと呼ぶのだが、特にこの辺りの牛乳を主原料とするチーズはクリーミーで別名”生クリームチーズ”を持つ程である。ケサダ(ベイクドチーズケーキ)、ソバオス(四角いマドレーヌケーキ)などどちらもまろやかな口当たりでつい食べ過ぎてしまった。
それだけではない。カンタブリア地方が誇る三大チーズをご紹介しよう。お隣アストゥリアス地方の名物カブラレスの弟分にもあたるブルーチーズ ”ピコン”、黄金色の肌が食欲を更に魅了するスモークチーズ ”アウマド”、円筒型でまろやかな味チーズ”コブレセス”。どれをとっても甲乙をつけがたく素晴らしい。これでカロリーが低けりゃ言うことなしなのだが・・・。
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