ゴヤの「女の妄」に描かれた遊び




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佐倉 想 [HomePage] 2010/05/21(金) 19:08:31
ゴヤの銅版画シリーズの「妄」の中,「女の妄」に描かれている,シーツに人形を乗せて,跳ね上げる遊び.名前を教えてください.出来たら,由来やその意味,また行われる季節など.

クリスマスにバルセロナで見てから気になっています.

tama 2010/05/21(金) 23:19:38
http://es.wikipedia.org/wiki/Pelele_%28mu%C3%B1eco%29

佐倉 想 [HomePage] 2010/05/22(土) 14:47:29
Tamaさん ありがとうございます.が私 不調法でスペイン語が読めません.申し訳ありませんが英語で読めるサイトかリンクを教えていただけませんか? またこれは”manteamiento”という遊びで,収穫の喜びを現す農民の遊びに由来していると言う風に言われているそうですが,このWikiにもそのように書いてあるのでしょうか?
ぜひ,ご教授ください.

池田 [HomePage] 2010/05/23(日) 17:44:00
佐倉さん、興味がわきましたのでいろいろ調べさせていただきました。

結論から言って、この当時の遊び(伝統行事)は「藁人形の(毛布での)胴上げ」(manteo del pelele)というのではないでしょうか?

tamaさんがご紹介したサイトは、この胴上げを行う際に使われる藁人形(pelele)の由来や胴上げをする際に女性たちが歌う歌詞などの説明がされています。

manteoは佐倉さんがご質問のように、manteamientoのことで「(毛布での)胴上げ」という意味です。
ただ、「収穫の喜びを現す農民の遊びに由来」というよりも、tamaさんのサイトからリンクされている文献の概要として以下のように簡単に書かれている通り、カーニバル[謝肉祭]の一つの行事として考えてよいのではないでしょうか。

SUMMARY

In the early 1800's, the old custom of hoisting people and dogs in the air by means of blankets turned into an expression of Carnival, developed chiefly by women. Strawmade effigies, known as peleles, were in every case representations of men whom women, while singing, would revile with all kinds of invectives. The custom lasted until well into the 1900’s, especially in Madrid and the southern towns within its province.
http://rdtp.revistas.csic.es/index.php/rdtp/article/download/40/41

日本語のwikipediaでは以下のよう説明しています;

カーニバルの語源は、一つにラテン語のcarne vale(肉よ、さらば)に由来するといわれる。ファストナハトなどは「断食の(前)夜」の意で、四旬節の断食(大斎)の前に行われる祭りであることを意味する。

一説には、謝肉祭は古いゲルマン人の春の到来を喜ぶ祭りに由来し、キリスト教の中に入って、一週間教会の内外で羽目を外した祝祭を繰り返し、その最後に自分たちの狼藉ぶりの責任を大きな藁人形に転嫁して、それを火あぶりにして祭りは閉幕するというのがその原初的なかたちであったという。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AC%9D%E8%82%89%E7%A5%AD

ご参考として、中丸 明氏の「スペインを読む事典」(278頁)にpeleleについて以下のように書かれていますが、これを読むとスペインでのこの習慣の意味が分るような気がします。

『ドン・キホーテ』前篇17章で、主人公ドン・キホーテは、遍歴の騎士たるものは宿賃を払う義務はない、とさっさと出発してしまう。貧乏クジを引いたのがサンチョ・パンサだ。宿の亭主と同宿の男たちはサンチョを裏庭に引きずり出すと、毛布の真ん中にころがし、その端をしっかりつかんで、カーニバルのときに犬を投げ上げて楽しむように、彼を宙高く毛布(ケット)上げにしたのである。
 カーニバルになると人々は家の出窓に藁人形を吊るす。この人形をペレーレという。「デクノ坊」とか「役立たず」の意味もある。女房の尻に敷かれている男もペレーレだ。
藁人形を毛布上げにする風習は、ゴヤも『あやつり人形』という作品に残している。
 毛布上げされるのは藁人形だけではない。犬も猫もさんざんな目にあう。ロバの尻尾に藁人形をくくりつけ、火をつけて追いまわすといったこともやる。
 この、ペレーレを宙高く上げる遊びをスポーツ遊戯に取り込んだのが、フランス人のリュー・トランポリンだ。ペレーレに始まったトランポリンが、第二次大戦中、米空軍によって操縦士の適正テストに使われていたと知ったら、サンチョは仰天するだろう。


最後にスペイン語ですが、この古い伝統行事を再現した動画がYoutubeにアップロードされてましたのでご紹介します。
場所はマドリッドのPozuelo de Alarcónと記されています。最後に伝統にのっとり?藁人形は燃やされてしまいます。

YouTube - Manteo del Pelele - La Poza
http://www.youtube.com/watch?v=F4FK_j817yA&feature=player_embedded

それにしてもゴヤ作銅版画連作Los Disparatesを日本では「妄」と訳されていますが、「常識を逸した行動」とか「でたらめ」という訳の方がピンときませんか?
素人が調べましたので間違いやご意見などがありましたら、ご指摘下さい。

佐倉 想 [HomePage] 2010/05/23(日) 20:15:43
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池田さん

色々お調べくださり,ありがとうございました.疑問が氷解しました.結構残酷な行事の名残なのですね.
なお,ゴヤの版画連作の名前「妄」ですが,現代では日本語の「妄」自身の意味も良く分かりません(せいぜい妄想ぐらいでしょうか).意味深にして短い表題にしたいからなのでしょうが.むしろ「カプリチョス」と同じように原語に近い発音を写したほうがよろしいのかも知れませんが.
貴重なご教示,感謝します.ブログに抜粋・引用させていただきます.

佐倉

池田 [HomePage] 2010/05/24(月) 23:24:57
佐倉さん
「ブログへの抜粋・引用」のお知らせありがとうございます。

早速、佐倉さんのブログを読ませて戴きました。
ただ一点、私が「スペイン滞在中」と表現されていましたが、残念ながら既に帰国しています。(ユーローが下がっていますので、また渡西したい誘惑にかられていますが・・・。) 

これからも美しい佐倉さんのブログの更新を楽しみにしております。


追加発言は締め切られました。
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