留学の秘訣教えます


4. 学校選びをはじめよう-まずは地方選び

質はともかく、数だけは異常に多いというのがスペインの語学学校マーケットの現状。大学付属の外国人コース、私立の語学学校などその数は180以上に及ぶといわれている。その中で本当に自分にあった語学学校を探し出すのは難しい。

80年代の後半から90年代にかけ、雨後の竹の子のようにその数を増やした私立の語学学校だが、その後の淘汰の時期を経て、再び新しい学校-既存の学校からスタッフが飛び出して作った学校から、チェーン展開を広げる大規模校の分校まで-がどんどん出来始めている。一方各地方の大学は夏季コースから通年コースまでコースのバラエティを広げ、世界各地の大学と提携を組んでの学生グループの受け入れに躍起になっている。北はガリシア、バスク地方から南はテネリフェまで、とにかく「外国人の集まるところ」には必ずある語学学校。近代設備バッチリ、冷暖房完備の豪華な大型校から、もうまさに寺小屋、校長が秘書も教師もやってる-なんてところまであってそのバラエティは様々だ。そんな中で何とか失敗のない学校選びができるかどうか-ここにちょっとしたアドバイスを挙げてみた。


●行きたい場所が留学に適した場所か
「海のそばに暮らしたいからマラガ!」
「やっぱりぜひ住んでみたいバルセロナ!」
そんな気持ちで留学場所を選ぶ-それで充分だし、ぜひ夢たっぷりで元気にいってもらいたい!ただし住んでみたい場所と学校をとりまく学習環境は必ずしも一致しないということを一応覚えておこう。

例えばの話、あなたが住んでみたいのは世界的に有名なリゾート地、テネリフェ。美しい海に囲まれ、気候は南国。数多くのリゾートマンションの広がる素晴らしい場所だ。外国人も多いし、語学学校もある。そこで1年間ばっちりスペイン語留学をしたい!!…もうこれはハズレの決心と考えてみてもいいかもしれない。

テネリフェに限らず、リゾート地として有名な場所の学校の多くがバケーションで訪れるグループ客を中心とした経営でなりたっている。ということは生徒のほとんどがスペイン語初心者で、レベル分けもほとんどない。なおかつみんなバケーションできているのに、ここでわざわざDELEの受験勉強をしようなんて人はいないし、勉強態度もそれなりのもの。クラスメイトは2週間ごとに変わり、数ヶ月でもうあなたは学校の長老状態だ。なおかつ夏も過ぎると生徒は激減し、なんとあなたが唯一の生徒ということにもなりかねない…。 

ここでは特にテネリフェを中心とした観光地や、そこにある学校の悪口をいっているのではない。例えばバケーション留学で過ごすのには最高な場所なのだ。ただ学習環境ということに重点を置き、学校の受け入れ態勢や雰囲気ということを考えた場合、「1年間かけてきちんとスペイン語を勉強する」環境があるとは言い難い。そして学校を選ぶ側として、だいたい「ビーチで快適ライフを楽しみながら、スペイン語のしっかりした実力を身に付けたい」というのは、「おいしいものをたっぷり食べて1ヶ月で5キロ減量!」とかいうフレーズと似たようなものを感じるのだが。

教訓: バカンスと留学のむりやり両立はやめよう


●地方色ということ
スペインは歴史的にいろいろな人種、文化が混じり合って出来た国。それだけに各地の地方色は色濃く、それぞれのお国自慢が盛んで楽しい。ここではその解説に多くの紙面を割かないが、各地の特色について、少し詳しく調べてみることをぜひお勧めする。これはこれから数ヶ月なりお世話になる土地に対する、最低限のエチケットだし、下調べの知識は後で必ず役に立つはずだ。サラマンカ→大学 マラガ→海 バルセロナ→ガウディ という、あまりにも短絡的なイメージしかもたないままで滞在先を選び、現地入りすると、あとでイメージとの現実のギャップに悩むだろうし、滞在経験自体薄っぺらいものになってしまうことだろう。

教訓:自分の住む場所の知識ぐらいはしっかり入れておこう。それが観光と留学の違い。



★言葉の違い
地方色の話となると、言葉の違い、方言などの話題となる。よくいわれるのが「サラマンカではきれいなスペイン語を話す」(サラマンカにも方言があるし、各地からやってきた人たちもたくさんいることをお忘れなく)

「アンダルシアは方言、なまりがあって分かり難い、汚い」(おいおい、この地方の人が聞いたら殴られるよ!たしかにアンダルシア独特の発音、その地でしか使わない言葉、言い回しはあるけれど、基本的には同じ)

「バルセロナはカタルーニャだけどみんなスペイン語を話す」(スペイン語を話せるけれども、地元の方の多くが普段カタルーニャ語を話す。)

ということだが、あまりにも偏った見方ではないだろうか?こういう意見をまとめてみると、どうしても
-その地方にはその地方出身の人しか住んでいない。
-方言は汚い。

という超単純、偏見的な意見がみえてきてしまう。これじゃ「スペイン人は皆闘牛が好きで毎日パエジャを食べる」的思想から全然進歩してない。

まずは各地の人々がその土地の言葉を大切にしており、誇りを持っているということ理解しよう。バスク語、カタルーニャ語、カスティージャ語、ガリシア語、バレンシア語、またマヨルカ語などそれぞれが長い歴史によって培われた文化なのだ。外国人向けの語学学校では、まずは「公用スペイン語-カスティージャ語」を教えてくれる。そのあとに各地の特色ある言葉遣い、またその土地の言語に興味を持ってみてはどうだろう。そうすると学校で学ぶスペイン語と、街で話されているものとの違いをはっきり理解できるだろうし…要はそういう違いがあるということを知って行くのと、知らないで行くのとでは大違いなんである。

カタルーニャ地方に行く方には、この土地の多くの人が日常生活でカタルーニャ語を話す場所であるということをぜひ覚えておいて欲しい。特に地元の人の「公用語=カタラン(カタルーニャ語)」意識の強い土地である。先程も述べたように、語学学校ではスペイン語を教えるし、通常こちらがスペイン語で話すとあれば、むこうもスペイン語で返してくれるので問題はないが、カタラン-カタルーニャ語というものが日本の方言以上の意味をもっている、1つの言語であるということをぜひ意識して欲しい。このことはその土地の人の意識差もあるが、他の地方にも同様のことがいえる。

バスク地方で日常話されるバスク語は、都市に限っていえば挨拶、簡単な表現などに限られており、会話100%がバスク語になるということはほとんどない。(地方農村にいくと話は別だが)ガリシアその他の地方では、年齢層が上がるに連れて日常会話としてガリシア語を使用している率が高くなる。アンダルシアに関しては発音の差に大きな特徴があるが、基本的はスペイン語を押さえておけば理解に苦しむ言葉ではない。どの地方もその言葉オンリーの新聞、テレビ放送などのメディアが充実しており、交通標識などもスペイン語との2ヶ国語で表示されている。観光パンフレットなども、例えばカタルーニャ語、英語、スペイン語というように3カ国語で解説が並べてあったりする。

これだけ各地の言葉の違いをなぜここで強調するかというと、なぜかどこのスペイン留学ガイドブックにも書いてないからなんである。もちろん大学でスペイン語を専攻されている方は予備知識があるだろうが、いまだ多くの方が「カスティージャ語(スペイン語)とその他大勢の方言」という大雑把な言語分布図しかもっていないように感じる。「きれいなスペイン語を学ぼう」、「正統なスペイン語学びたい」ということをよく耳にするけれども、じゃあアンダルシア地方のスペイン語は「汚いスペイン語」なのか、中南米諸国で使われているスペイン語は「邪道なスペイン語」なのか-ということになってしまう。 言葉は時間や風土、人の気持ちの移り変わりと共に変化していく柔軟な、ある意味で掴み所のないものだ。その多様性をまずは受け入れ、理解しようとしないと、言葉を学ぶ上での大きな躓きとなってしまうことだろう。


教訓 : 各地に言葉の違いがあることを認識し、理解しよう。


後藤 美智子
留学の秘訣 《目次》 3.ばかにできない短期留学


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